「次は人間」医療少年院から解き放たれたモンスター 茨城家族殺傷事件

悲劇は繰り返された

茨城県境町の住宅で2019年9月、会社員小林光則さん(当時48)と妻のパート従業員美和さん(同50)が殺害され、子ども2人が重軽傷を負った事件で、県警は7日、夫妻に対する殺人の疑いで埼玉県三郷市の無職・岡庭由征容疑者(26)を逮捕した。県警は認否は明らかにしていない。

県警によると、室内に物色された痕跡はなく、被害者家族との接点はなかった。逮捕容疑は、19年9月23日午前0時40分ごろ、小林さんの自宅で、夫妻それぞれの胸と首などを刃物で複数回刺し、失血死させた疑い。2階寝室で夫妻の遺体が見つかり、上半身の正面に多数の刺し傷があった。子ども部屋にいた長男(14)と次女(13)も重軽傷を負い、1階にいた長女(22)は無事だった。

同容疑者が“ホシ”として完全マークされたのは、昨年11月。硫黄45キログラムを所持したとして、三郷市火災予防条例違反で逮捕された。捜査関係者はこう言う。

「被疑者の名前を見て、ピンと来た」

2011年12月5日、当時16歳だった同容疑者は連続少女刺傷事件事件の容疑者として逮捕されていた。同11月18日、埼玉県三郷市内の路上で中学3年生の女子生徒の右アゴを切りつけ、全治2週間の重傷を負わせた。さらにその2週間後には千葉県松戸市の路上で、小学2年生の女児の背中や脇腹など4か所を刺した。自宅からは20本以上の刃物が見つかったという。

「事件を起こす1か月前、岡庭容疑者は千葉県内の高校を自主退学。学校の教室に猫の生首を持ってきたのが原因だった。三郷の切りつけ事件の直前には周囲に『動物を殺したので、次は人間』と話していたとされ、一般紙でも大々的に報じられた」(同)

事件の裁判で検察は「再犯の恐れが極めて強い」と指摘し、懲役5年から10年の不定期刑を求刑。しかし、さいたま地方裁判所は2013年3月、逮捕後の精神鑑定の結果を踏まえ、刑事罰ではなく医療少年院への送致を決めた。

しかし、再び惨劇が繰り返された。医療少年院から解き放たれたモンスターは躊躇なく無差別殺人に及んだのだ。

同容疑者の自宅からは硫黄に加え部屋からは硫黄のほか、猛毒のリシンを含有するトウゴマなども押収。捜査関係者は「まるで実験室のようだった」とこぼす。

ネット上では危険性を把握しながら、容疑者を医療少年院送りにした地裁判決に批判的な意見が寄せられている。

「1997年に起きた神戸連続児童殺傷事件を彷彿とさせる。罪の意識なく、犯行を繰り返すサマはサイコパスと表現してもおかしくない」とは警察関係者。事件の全容解明が急がれる。

© 株式会社東京スポーツ新聞社