災害時の避難所運営リーダー、神奈川県内の9市町で女性ゼロ 3市は把握もせず

「城山ダムが緊急放流」との情報を受け、多くの住民が身を寄せた学校体育館=2019年10月12日午後5時40分ごろ、厚木市水引

 災害時に被災者が生活する避難所に、女性の視点をどう反映させるかが問われている。神奈川新聞社が県内33市町村に実施したアンケートでは、住民らでつくる避難所運営のリーダーに女性が一人も就いていない自治体が9市町あり、3市は女性がいるかどうかを把握していなかった。また、避難所の運営委員に占める女性の割合について、目標を定めている市町村はゼロであることも分かった。

◆国は「3割以上」要請

 小中学校などに開設される避難所を巡っては、自治会・町内会や自主防災組織の代表者、施設管理者、市町村職員などをメンバーとする運営委員会を災害が起きる前に設置しておくことが求められている。

 国のガイドラインでは、運営組織の責任者に男女双方を配置するとともに、役員の「少なくとも3割以上が女性となる」との目標を市町村に要請している。トイレや更衣室、授乳スペースなどに関する多様な声やニーズを反映させ、性別によって偏りがちな役割分担の課題を改善するためだ。

 しかし、理念とはほど遠い実態が、今年1~2月に行ったアンケートで浮かんだ。

◆男性自治会長が兼務

 避難所運営委員会の委員長に「女性はいない」とした横須賀、小田原など9市町の多くが、理由について「男性の多い自治会長が運営委員長を担っているケースが多いため」と説明。「女性がいる」と回答した川崎、厚木などの9市町でも同じような傾向があるという。

 内閣府男女共同参画局の集計では、県内の自治会長に占める女性の割合は9.6%(2020年度)と圧倒的に低い。地域活動を巡る状況が災害対応にもつながっている実態が浮き彫りになった形だ。

 運営委員長10人のうち3人が女性で、県内で女性の割合が最も高かった寒川町の担当者は「避難所の近所の人に役員をお願いしている」。同町を含め、運営委員長の性別を把握している18市町について、女性の割合を算出すると、4.2%にとどまっていた。

◆横浜市「区が集約」

 一方、横浜、相模原、鎌倉の3市は運営委員長の性別は不明と回答。横浜市は「区が集約している」と説明している。

 秦野市と二宮町は「委員長は置いていない」とし、箱根町と清川村は「職員が避難所を運営するため、運営委員会は設置しない」などと答えた。このほか、茅ケ崎や海老名など8市町は「災害後に運営委員会を立ち上げるため、委員長は未定」などとしている。

 委員の性別割合について避難所運営マニュアルなどで目標を定めている自治体はなかったが、「委員に女性を含めるよう依頼している」と厚木市。「各避難所の運営に携わる市職員4~5人のうち、1~2人は女性にする」(平塚市)、「物資分配班の班員やグループのリーダーなどに、できるだけ女性を配置するようマニュアルに明記している」(茅ケ崎市)といった回答もあり、多くの自治体が課題を認識していた。

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