諫早方言 後世に伝えたい 元高校校長・緒方さんが自費出版

諫早方言をまとめた「存亡の故郷言葉」を手にする緒方さん=諫早市内

 長崎県諫早市栄田町の元高校校長、緒方隆一さん(71)が失われつつある諫早の方言を集め、その意味などを紹介した「存亡の故郷(ふるさと)言葉」を2年弱の作業期間を経て自費出版した。副題の「無シヒンナットノ 惜(あったら)シカ」は「無くなってしまうのがもったいない」の意味。「一つの方言文化が失われるのは惜しまれる。後世に伝えるために、記録に残したかった」と出版に込めた思いを明かす。
 「万葉集の歌に使われた千数百年前の言葉が、日本各地の方言に残っている。そこに魅力を感じた」緒方さんは、長崎大教育学部時代から古里・諫早の方言を研究。国語教諭だった現職時代には県内各地の方言を紹介した本紙の「ふるさと言葉」で、諫早地区の執筆を担当した。
 3部構成。第1部では「アギ(顎(あご))」「コーヨナ(格別と感じた時の感動表現)」など、「あ行」から「ん」まで約930の語句の意味や用法を説明し、諫早方言と同じか類似の言葉が存在する地域名も挙げた。緒方さんの世代でも使わない方言に関しては、市内に暮らす母親(93)に電話で確認するなどした。「ツイカワ(井戸)」などは、製本前の冊子を見た友人から「載っとらんぞ」と指摘を受けて、加筆した。
 第2部では、万葉集の歌に使われ、諫早の方言に残る語句を、大学時代の卒業論文を整理し直したという第3部は自身が生まれ育った小野地区の表現類型と諫早特有の文末詞「ナタ」について記載。「ナタ」や「のう、おまい(お前)」が語源とみられるという文末詞の「ノマイ」について、緒方さんは「今では、使っている人はほとんどいないでしょう」と寂しげだ。
 A4判、133ページ。400部印刷し、市内の一部高校に贈ったほか、市立図書館などに寄贈する予定。「方言の再認識になればうれしい。これを読んだ人が、県内のそれぞれの地域の方言を調べるきっかけになればと思う」と話している。

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