【陸上】「苦しい」が本音の新谷仁美 葛藤を抱えながらも声を上げるワケ

陸上の女子1万メートル代表の新谷仁美

感染症対策は万全なのか――。陸上の東京五輪テスト大会(国立競技場)が9日に行われたが、女子1万メートル東京五輪代表の新谷仁美(33=積水化学)は、一部選手の行動に疑問を投げかけた。

テスト大会を開催するにあたり、運営側は徹底した新型コロナウイルス感染症対策を敢行。選手らには休憩中はマスクを着用するように呼び掛けていた。しかし、新谷は「神経質なのでちょっと気になる」と前置きした上で「私だけが気にしていたのかもしれないが、(休憩中に)マスクをしていない選手がいたので、そこは(マスクを)してほしいなと思った。見た目だけでもいい。苦しいのは分かるし、私だって苦しいし、マスク外したいし、マスク女子じゃないから」と苦言を呈した。

多くのアスリートはきっちりとマナーを守るが、やはりマナーを守れないアスリートもいるのが事実。「こういうルールで頑張りましょうって言われている。散々アスリートが悪く言われているが、そういうところだよって思ってしまう。小さいところでもしっかりと気をつけることで、チリも積もれば山となるじゃないが、他の選手にも気を使ってほしい。他の選手を守る意味でも」と訴えた。

新谷と言えば、物怖じしない発言で多くの人たちの共感を得てきた。とはいえ、さまざまなことを考えながら公の場の発言するのは「苦しい。正直今年に入ってから考えている。引退するわけではないが、今後のことを考えている」と複雑な表情を浮かべながら「1人の人間としては五輪の開催に関しては『命より大事なものはない』ので、命優先に考えてほしい。ただ、アスリートとしてどういう答えが望ましいか分からない」と心境を吐露した。

五輪の開催を巡り、さまざまな意見が飛び交う中、新谷の重い言葉は人々の心に届くだろうか。

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