戸建に住み替えを検討中の夫婦「新築か中古、建売か注文住宅、向いているのは?」

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、41歳、会社員の女性。結婚前にマンションを買った相談者。コロナ禍で、家で過ごす時間が増え、住み替えを検討しています。新築か中古か、建売か注文住宅か、それぞれの資金計画面での注意点や向き不向きを知りたいといいます。FPの渡邊裕介氏がお答えします。

まだ独身だった12年前に、新築分譲マンションを購入しました。その後、結婚しても手狭ながら住み続けていますが、コロナ禍に家で過ごす時間が増え、気になる点が増えてきました。そこで一戸建てへの住み替えを検討しています。

新築分譲マンションを購入した反省からコストパフォーマンス的には中古を、と以前から思っていたのですが、断熱性能や耐震強度など考えると、やはり新築も捨て難く、色々調べているうちに、建て売りではなく自分の納得のいくように、パッシブハウスのような注文住宅に大変魅力を感じています。

そこで、新築建て売りを買う場合、中古住宅のリフォームする場合、土地を買って家を建てる場合、それぞれ資金計画の気をつけなければならないポイントや、人によって向き不向きなど有れば教えていただけますでしょうか?

また、長期的にはエネルギー効率の良い家にリフォームしたり建てたりする場合は、助成金などがあると思いますし、光熱費もかなり節約になるというのはわかるのですが、初期投資は大きいため、何年くらい住み続けてブレイクイーブンと言えるのでしょうか? 家のグレードによって違うとは思いますが、どのような時間軸で考えたら良いのか、10年なのか30年なのかざっくりとしたイメージを持つにはどうしたら良いでしょうか?

【相談者プロフィール】

・女性、41歳、会社員、既婚

・住居の形態:持ち家(マンション・集合住宅・東京都)

・同居の家族について:夫(53歳)、無職

・毎月の世帯の手取り金額:月収69万円

・年間の世帯の手取りボーナス額:

120万円 (年1回、会社の業績によるためかなり変動があります)

・毎月の世帯の支出の目安:45万円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:20 万円(住宅ローン、管理費など、駐車場)

・食費:10万円

・水道光熱費:1万8,000円

・保険料:2万円

・通信費:1万円

・車両費:2万円

・お小遣い:6万円

・その他:日用品など3万円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:23万円

・ボーナスからの年間貯蓄額:50万円

・現在の貯蓄総額:600万円

・現在の投資総額:投信、ETFなど(一部外貨建て資産) 1,500万円

・現在の負債総額:住宅ローン残債2,900万円。金利0.85% 完済予定2038年

売却した場合いくらか手元に残る見込みです。


渡邊:こんにちは。ファイナンシャルプランナーの渡邊です。

住宅を購入するにあたり、「新築建売」か「中古物件リフォーム」か「注文住宅」のそれぞれの違いに関するご相談です。せっかくのマイホーム、長く住むことを考えると、ご自身の家族構成やライフスタイルに合った住宅にしたいもの。それぞれの特徴を押さえて、ご自身にマッチした住宅探しを目指しましょう。

新築物件と中古物件を比較

「建売住宅」も「注文住宅」も、大きく括れば新築物件です。まずは、新築物件と中古物件との違いについてみていきましょう。

新築物件の一番の魅力は、ゼロから自分好みの家を建てられることでしょう。住まいを考える時に、住むエリアや外観や間取りなどに目を向けがちではありますが、その家に長く住む上で非常に重要なのが、「耐震性」や「耐久性」などです。

新築であれば、最新の耐震基準に沿って施工されるので安心です。また、ご相談者が希望されているように断熱性能や省エネ対策などについても、新築のほうが効率よく対応出来ます。

一方、中古物件をリフォームする場合は、その物件の建築年月日によっては耐震基準が古いものであったり、構造面でも補強が必要な場合もあります。特に断熱性や省エネについては、時代と共に進化しており、既存の構造で対応しようとすると大規模なリフォームが必要となり、コストも掛かってしまいますのでお勧め出来ません。

もちろん、中古物件のほうが立地の良い物件が豊富であったり、リフォームも比較的デザインや性能面も自由に設計でき、コストもある程度コントロール出来るなどの利点もあります。

新築を購入したくても、建売でも土地からでも、希望するエリアでなかなか見つからない、という方は非常に多いです。住むエリア重視で物件を探す場合は、中古住宅のほうが、選択肢が広がるでしょう。

コスト面はリフォームが有利だけど…

コスト面でいうと、中古物件で耐震性に問題なく、構造上大きな傷みなどが無ければ、基本的にはリフォームのほうが費用を抑えられます。

中古で検討する場合は、同じエリアで新築と比べて、中古リフォームしての費用が70%~80%程度におさまるのを目安としましょう。ただし、既存の構造を基礎にリフォームすることになるので、住宅性能については希望に叶うかどうかは要注意です。

ご相談者については、コロナ禍で家で過ごす時間が多くなり住み替えを検討している点や、断熱性や耐震性、エネルギー効率などを気にされていることを考慮すると、新築のほうが希望に合った物件を見つけられるのではないでしょうか。

建売住宅か注文住宅か?

では、新築で検討する場合の「建売住宅」と「注文住宅」について比較してみましょう。

「建売住宅」は、土地と建物がセットで販売されている分譲住宅です。住宅の建築中に販売がスタートするケースと、住宅完成後に販売開始されるケースとありますが、基本的には住まいの設計は決まっています。一部、間取りなどある程度自由度がある物件もありますが、基本的な仕様が決まっているものがほとんどです。

ある程度パッケージ化されているため、建材をまとめて大量に購入できたり、工事も効率的に進めることができる為、注文住宅よりも割安になることが特徴です。

一方「注文住宅」は、より自由に間取りやデザイン、使用する資材などを選択することができるので、ご自身のライフスタイルに合った住まいを実現することが可能です。ご相談者が気になっているパッシブハウスも実現可能です。

パッシブハウスとは、ドイツ発祥で、世界基準で建てられた、住み心地の良さを追求した省エネルギー住宅です。住宅性能基準は、日本の一般的な新築住宅よりも2~3倍ほど高い断熱性能が求められます。空気の逃げ道をなくし、断熱効果を高めることで熱を逃がさないような工夫がされており、冷暖房の使用頻度を抑え、光熱費を抑えながら、夏は涼しく、冬は暖かく過ごせる省エネ住宅です。

一般的な住宅に比べて初期のコストが掛かりますが、光熱費などのランニングコストを抑えることが可能なのと、何より気温変化による身体への負担が少なく、将来高齢になっても長く住むことを考えると、健康に配慮した住宅であることは医療費負担も抑える効果が期待できます。
長期的にエネルギー効率の良い家に住むことを考えると、購入後にリフォームで省エネ対策をするのは、コスト面でも効果面でも非効率です。

一方、「注文住宅」の場合、土地から購入することになります。住宅ローンは家の引き渡し時に融資実行されますので、土地の購入代金や、建物を建てる際の着工金や中間金などは、「つなぎ融資」で住宅ローン実行まで一時的につなぐのが一般的になります。この「つなぎ融資」に対応する金融機関も限られているため、ネット銀行系が難しくなるなど、選択肢の幅が狭まります。

価値観にマッチした住宅選びを

このように、それぞれにメリットデメリットがあります。

ご相談者が、コスト面を最重要視するのであれば、「中古リフォーム」、希望する住宅性能の建売が希望エリアで見つかれば「建売住宅」、住宅性能にとことんこだわり、長く安心して暮らせる住まいの実現や、長期的にコストパフォーマンスが良くなる可能性を考えると「注文住宅」が最適となります。

いま一度、ご自宅を購入する上で重要視したいポイントを整理し、ご夫婦の価値観にマッチした住宅選びをしていただければと思います。

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