コンドミニアムとレンタルビルの違い 【ニューヨーク不動産最前線】

今回はとても質問の多い、コンドミニアムとレンタルビルの違いについてご紹介したいと思います。

アパートレンタルのショーイングをしていていつも聞かれるのがこの質問です。一番の違いは、コンドミニアムの部屋は個人オーナー所有、レンタルビルは部屋単位ではなく建物全体が企業所有であることです。レンタルビルは企業がアパート賃貸をビジネスとして運営しています。コンドミニアムは基本的にオーナーが自己使用している場合が多く、どちらかというとレンタルに出すのは少数派です。コンドミニアムオーナーは専門家ではないので、部屋を貸し出したり売ったりする時はほぼ100%の割合で不動産エージェントと契約をします。

オーナー個人が自分の専任エージェントを決めてマーケットに出すため、オーナーによってエージェントも異なります。そのため、アパート探しをする人は同じ建物内でもそれぞれのオーナーエージェントに個別に問い合わせをする必要があるのです。レンタルビルの場合は、建物内にレンタルオフィスがあり、ビルの専属エージェントがどの部屋も見せてくれる仕組みになっていて、借り手にとってはこの辺の区別がややこしいようです。建物を見ただけでは、レンタルビルなのかコンドミニアムなのか外観で見分けがつかないからです。

リスティングしている物件に問い合わせがある時に、ほかの部屋もついでに見せて欲しいと言われるケースが多いのですが、コンドミニアムの場合はオーナーと契約している物件以外は見せる権限がないため、エージェントとしてはお断りすることになってしまいます。アパート探しをする場合はこの辺りの違いを理解しておけば、なぜ同じビルなのに部屋毎にエージェントが違うのか戸惑うことがなくなると思います。

自分で一軒一軒アポを取る時間が無い人や言葉の問題等で不安がある場合は、テナント側もエージェント契約をすることができます。ただしその場合は、テナントは自分と契約したエージェントにブローカーフィーを払う必要があることをあらかじめご理解ください。

契約の面では、レンタルビルは申し込みから契約までの流れがとてもスムーズでスピーディーです。ビルに直接申し込みをするため、申込用紙に記入したら即日オッケーかどうかの返信があり、すぐに契約となります。支払いが済めば明日にでも入居できるというお手軽感が魅力です。

コンドミニアムの場合は、まずオーナーに申し込みを出し、そこで話がまとまったら次にコンドミニアムボードへの入居申請があります。このボードへの申請書類の作成が結構大変で、書類を揃えて出すのに数日から1週間かかり、やっと申請を出しても審査に2〜3週間はかかります。コンドミニアムへの申し込みには時間と気合が必要です。

これだけ聞くと賃貸するならレンタルビルのほうがいいような気がしますが、コンドミニアムの場合はオーナー自己使用率が高い分建物の雰囲気も落ち着いているし、レンタルビルに比べると家賃設定もかなり低めになっていることが多いので、長期で住むことを考えている人にはコンドミニアムはおすすめです。皆さんも、物件を見る機会があればこのような違いを知ったうえで比べてみると、違った見え方になるかもしれませんよ。

ライタープロフィール
柏原知子 (Tomoko Kashihara)

大阪女子大学(現:大阪府立大学)卒業後、CBRE Japanに入社。東京で外資系企業のオフィス移転を担当する商業不動産ブローカーとして働いた後、ニューヨーク勤務を機に住宅ブローカーに転向。1999年より住友不動産販売NYで活躍した後、2021年に米系大手Compassに移籍。趣味は旅行、クルーズ、トレッキングとイタリア語。

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