県内現役最古の丸型ポスト 古きぬくもりの赤 復活 日光・湯西川

県内現役最古とされる丸型ポストの塗装作業

 栃木県日光市湯西川の老舗旅館「本家伴久」に、戦前の製造で県内現役最古とされる丸型の郵便ポストが設置されている。昔懐かしく、ぬくもりを感じさせる姿を守っていこうと、現役やOBの郵便局員などでつくる全国組織「丸型ポストの会」の2人がこのほど、同旅館のポストを製造当時の姿に戻すための塗り替え作業を行った。

 同会によると、現役で使われる戦前の丸型ポストは全国で計10基しかない。いずれも大正~昭和初期に製造されたと推定される。東京駅や愛知県の豊川稲荷、千葉県銚子市の薬局などに設置されている。

 同会副代表で元日本郵便職員若林正浩(わかばやしまさひろ)さん(61)は、千葉県の銚子郵便局長だった2011年、東日本大震災で津波被害を受けた街を元気にしようと、同僚たちと共にポストの塗装を開始した。

 以降、全国で丸型ポストなどの修復・保存活動を進めており、郵便制度誕生から150年、東京・日本橋に初めて赤色の丸型ポストが設置されて120年の節目の今年、同旅館のポストの塗装を行うことにした。

 同旅館の玄関付近にある丸型ポストは、高さ約1.3メートルで鋳物製。1929、30年ごろの製造とみられる。「郵便」の文字が右からつづられ、投函(とうかん)口付近の“顔”の部分や、ひさしに雷文模様がある。取り出し口などの桜の模様も特徴だという。

 若林さんと同会メンバー小沼隆行(こぬまたかゆき)さん(53)が4月中旬に同旅館を訪問。約7時間かけて作業し、赤色や金色のペンキで細部まで丁寧に塗って製造当時の鮮やかな色をよみがえらせた。若林さんは「古い時代のポストを見て、手紙やはがきの良さを改めて感じてもらいたい」と話した。

 同旅館の伴輝彦(ばんてるひこ)(59)社長は「ポストは地域住民も多く利用する。湯西川のシンボルとして存続し、今後も温泉郷を見守ってもらいたい」と話している。

県内現役最古とされる丸型ポストを塗装する若林さん(右)と小沼さん
県内現役最古とされる丸形郵便ポストを塗装する同会メンバー

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