2020年12月期決算「上場企業343社の従業員数」調査

 2020年12月期決算の上場343社の総従業員数(正社員)は34万5,821人(前年比0.9%増)だった。前年の34万2,552人より3,269人増加した。
 従業員数の最多は、カメラ・事務機器の最大手のキヤノン2万5,713人(前年2万5,740人)。以下、山崎パン1万9,832人(同1万9,490人)、ブリヂストン1万4,858人(同1万4,567人)と続き、従業員数が1万人以上は5社(前年5社)だった。
 従業員の増加率の最高は、韓流スターのコンテンツ事業などを手掛けるストリームメディアコーポレーション(JASDAQ)の前年比70.1%増(57→97人)。また、広告ビジュアル制作の大手のアマナ(東証マザーズ)は同48.4%増(563→836人)で、この2社は合併で従業員数が増加した。一方、減少率では最大が、インパクトホールディングス(東証マザーズ)の同82.9%減(147→25人)だった。会社分割により各事業の従業員を出向させたため。
 2019年同期は人手不足が顕著で、総従業員数は34万2,552人(前年比2.3%増)と7,963人増加した。しかし、新型コロナウイルス感染拡大に伴う事業活動の縮小や業績悪化もあり、2020年12月期の従業員数の増加率は落ち込んだ。
 新型コロナウイルス感染拡大により、人手不足が一転、人員の余剰感が強まっている。従業員数の減少率が大きい企業では、希望退職の募集や不採算店舗の閉店などで従業員数が減少している。コロナ禍の収束が見えないなかで、従業員の採用抑制、さらなる削減などが懸念される。

  • ※本調査は、2020年12月期決算の全証券取引所の上場企業を対象に、有価証券報告書の従業員数(正社員)を抽出、分析した。2018年12月期決算から連続で比較可能な企業を対象(変則決算企業は除く)に、持株会社は除いた。業種分類は証券コード協議会の定めに準じた。
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従業員数「減少」の構成比が9.3ポイント上昇

 上場343社のうち、前年より従業員数が増加したのは220社(構成比64.1%、前年252社)だった。一方、減少は107社(同31.1%、同75社)で、前年の1.4倍に増加。また、構成比も前年の21.8%から9.3ポイント上昇した。横ばいは前年と同数の16社だった。

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産業別 卸売業、小売業の2産業で減少

 産業別では、最高が製造業の24万6,830人。前年の24万5,280人より1,550人増加した。
 製造業159社のうち、96社(構成比60.3%、前年112社)で従業員数が増加したが、増加社数は前年同期より16社減少した。
 従業員数の伸び率は、最高が金融・保険業の前年比6.0%増(330→350人)だった。全3社で、従業員数が増加した。以下、運輸・情報通信業が同3.36%増(3万3,838→3万4,975人)、不動産業が同3.34%増(3,076→3,179人)と続く。
 一方、減少は2産業で、小売業が同16.0%減(4,258→3,574人)、卸売業が同2.3%減(1万205→9,969人)だった。
 小売業は、13社のうち、6社で前年を下回った。希望退職の実施(ラオックス、ペッパーフードサービス)や不採算店舗の閉店(グローバルダイニング、和心)などが行われた。

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会社分割や希望退職、閉店などで従業員数が減少

 従業員数の減少率が最も大きかったのは、店舗調査などを手掛けるインパクトホールディングスで、前年比82.9%減(147→25人)。会社分割による事業移管で、従業員が減少した。
 次いで、外食産業のペッパーフードサービス(東証1部)の同49.6%減(949→478人)。希望退職の実施と新設分割した企業に事業を移管したため。
 また、和雑貨販売の和心(東証マザーズ)は同49.4%減(89→45人)。店舗数の減少により、従業員数が減少した。そのほか、HANATOUR JAPAN(東証マザーズ)が同43.3%減、片倉工業が同41.2%減、ラオックスが同39.8%減で、希望退職の実施で従業員数が減少した。

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