ミレニアム債権回収・検本社長 独占インタビュー(前編)「不良債権市場」は間違いなく拡大する

 2021年1月、海外でレンディングやサービサー事業を手がけるオーストラリアのペッパー・グループ傘下となったミレニアム債権回収(株)(TSR企業コード:294520910、東京都港区)。
 グループ入りの経緯や日本のコロナ禍における、国外の様子も含めた不良債権ビジネスの動向を、ミレニアム債権回収の検本(けんもと)浩司社長に聞いた。

-ペッパー・グループによる買収の経緯は

 当社は2005年に外資系投資ファンドのムーアグループからMBO(経営陣買収)で独立し、独立系サービサーとして活動してきた。
 しかし、不良債権が減少する環境下で、当社としてもバックグラウンドを求めていた。
 ペッパー・グループは2001年にオーストラリアで、住宅ローンや消費者向けローンなどのレンディングを目的に設立された。レンディングは債権回収と一対のところがあるので、彼らはサービシングのスキルも持っている。そうした背景もあって、リーマン・ショック以降のグローバル金融危機の過程で、ゴールドマン・サックスにヨーロッパの不良債権投資を紹介し、自分たちはサービサーとして参加するというグローバルな展開を始めた。アジアでは2013年に韓国の貯蓄銀行(※)を買い、システム化や、いわゆるスマホレンディングなどで非常に成功している。
 そういった発展性を認められ、今はアメリカの投資ファンドであるコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)が過半数を占める株主となっている。KKRといえばエクイティのビッグディールというイメージだが、ファイナンスの分野での投資も取り扱っている。
 そのなかで、KKRも含めてアジアシフトを意識して中国市場にも参入し、2019年にはインドでサービサー事業をジョイントで立ち上げた。そしてさらに次の展開ということで、一昨年の秋頃からは、総合金融グループとして日本の金融マーケットに参入するためのアプローチを始めた。
 やはり韓国の貯蓄銀行での成功体験があるようで、当初の構想としては、日本でも地銀買収が目標だった。

  • ※個人や中小企業などを主な対象にした、韓国の地域金融機関

-最終的には地銀を買収したいのか

 それは「その通り」だ。ただ、韓国では銀行の買収で成功したかもしれないが、日本とは環境が全然違う。韓国の貯蓄銀行は、いわゆる日本の一般的な地銀というよりは、資金の集め方や融資先の点でノンバンクに近い。
 その点を踏まえてどうするかを検討している間に、新型コロナ感染拡大とコロナ不況が来た。去年の3月頃は特に、株価がぐっと下がっていたこともあり、そうなると間違いなく不良債権市場が拡大するということで、(ペッパー・グループ側は)サービサーを買おうとなった。
 また、今後のあり方として、地銀にいきなり外資が出て行く、ということではなく、まずは金融機関からの信頼を得て債権を取引する、その上ではサービサーと組んで事業再生を進めることが必要だとなった。

検本社長

‌インタビューに応じる検本社長

-海外の不良債権の現状は

 ペッパー・グループ全体として、不良債権マーケットが活性化するという見方ではあるが、実際にどの地域がどういう風にというところまではまだはっきりしていない。ただ、同じペッパー・グループ内でも地域ごとにそれぞれ濃淡があり、例えば、ヨーロッパ、インド、中国などでは増加傾向にある。一方、オーストラリアなどではあまりない。世界だけでなくアジアのなかでも地域差はあるだろうとみている。

-日本ではどうか

 ここ数年はアベノミクスなどもあって、もうすぐ壊れるぞ、壊れるぞと言いつつも、不動産市況は持続している。また、低金利によるカネ余りで、不良債権も減少傾向にある。
 2000年頃、竹中金融担当大臣(当時)の「不良債権半減」目標のもと、破綻生保の不良債権など大型のバルク売却に取り組んでいた時代には、債権を買い、回収可能性にプライオリティを持たせて不動産売却をし、回収を進めましょうとやっていた。しかし、もうそういった考え方のみで進める時代ではない。事業再生に取り組みつつ、地銀との信頼関係を早い段階から構築し、そこから実際に不良債権が出てきたときに扱わせてもらえるようになるのが今後の理想だ。

-コロナ前は日本の不良債権の先行きをどう予想していたか

 落ち着いた状況が継続していくとは思っていた。ずっと言われていたことだが、金融円滑化法以来の過剰債務の元本弁済は、低金利によって金利だけ払って先送りにされ、ずっとマグマのように溜まっている。その一方で、地銀を含めた金融機関の金利収入が減少し、収益も悪化するなかで処理体力が低下し、不良債権の償却がなかなか進まず先送りされることが続くのではと考えていた。
 この一年くらいは特に、(コロナによる)大きな経済の転換期に直面し、今後の見通しも変化してきている。とはいえ、コロナ前の時点では、やはりしばらく債権マーケットの状況はそう変わらないだろうという考えだった。

-不良債権が増加しそうな時期や業種は

 時期は、当初の見立てよりはちょっと後になるだろうと想定している。2022年3月期で少し増加し、本格化はその一年後の2023年3月期頃ではないか。銀行の再編とセットの可能性もある。
 業種では、まずは飲食業や宿泊業、交通系などから始まるだろう。それらの業種は労働集約的なところがあるので、賃金などが厳しくなると、多くの人が住宅や店舗を手放さなくてはならなくなる。これらにより土地価格、収益不動産等の価値低下が進み、その次は不動産業で本格化するだろう。
 また、業界再編が進む自動車部品を中心に、今後はメーカーも厳しくなると予想している。全体への波及によって、影響を受ける産業が増えると、影響の出た産業へ供給しているメーカーは、当然厳しくなる。

(続く)

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2021年5月11日号掲載「WeeklyTopics」を再編集)

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