東京五輪が「ドーピング天国」に! 米紙がコロナ禍で各国の“検査格差”広がる懸念指摘

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ドーピング検査機関が今夏の東京五輪を前に〝検査危機〟を訴えた。

米紙「ニューヨークタイムズ」は「世界のドーピング防止組織は、今夏の東京五輪を前に検査計画を進めるのに苦労している。これは新型コロナのパンデミックにより、多くの国で問題を解決できなくなったためだ」と新型コロナ禍の影響により、ドーピング検査が危機的状況にあると指摘。国際オリンピック委員会(IOC)が五輪の試験プログラムを管理するために設立した独立検査機関(ITA)のベンジャミン・コーエン事務総長も「一部の組織は強力だが、一部の組織では資源が不足している」と検査を巡る現状を問題視した。

同紙によると、ドーピング検査は大会期間中よりも大会直前の期間が重要だという。「五輪本大会へ到着後にアスリートを検査するだけでは遅すぎるため、より長期間の計画が重要になる。ドーピングするアスリートはパフォーマンス向上薬を使用してトレーニングを行い、利益を得るのに十分な時間がある。この効果は、薬が体から抜けた後も長く続く」と説明する。

そうなると五輪まで3か月を切った現状の検査体制が重要になるが、新型コロナ禍により各国で感染対策が徹底されているため通常の検査計画を実行できないという。

「今年最初の3か月間に5万2416回の検査が実施されたが、これは感染流行前の通常の年だった2019年の同時期の6万8291回と比較すると23%も少なくなっている」と同紙はデータを用いながら指摘。

「コーエン氏によると現在は、国境の閉鎖、尿や血液サンプルの収集過程での感染の恐れなどパンデミックに絡む金銭面や物流上の問題がある。特に貧しい国での検査を担当する地域機関は困難を抱えている」とその深刻な実態に注目する。

問題が明るみになっても「ITAは欠点を指摘し(各地域の)ドーピング組織に対してこの重要な期間中に検査を増やすよう促すことをする力がない」と機関同士の連携にも問題があり、東京五輪でドーピング検査をすり抜ける例が相次ぐ危険性を指摘した。

ただでさえ国家間の感染状況の格差により準備に不公平が生まれると指摘されている東京五輪。開催を強行すれば〝薬物蔓延五輪〟になる恐れもありそうだ。

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