連続被弾レアードに「ボール球4つ内角に投げろ」 鷹・工藤監督が出した“指令”のワケ

ソフトバンク・武田翔太【写真:藤浦一都】

3ボールから相次いで先制打、ソロ本塁打を浴びた武田と甲斐のバッテリー

■ロッテ 4ー1 ソフトバンク(11日・PayPayドーム)

11日に本拠地・PayPayドームで行われたロッテ戦に4-1で敗れたソフトバンク。2015年以来6年ぶりとなる6カード連続勝ち越しなしとなり、3位に転落した。主力の離脱者が続出する中で、苦しい戦いからなかなか抜け出せないでいる。

先発の武田は初回に1点を失うと、2回にもレアードに一発を浴びるなど2失点。4回には再びレアードに一発を食らった。7回まで投げて7安打4失点と粘ったものの、打線が沈黙し序盤の失点が響く形に。試合後の工藤公康監督も「打たれることもあるんですけど、ツーアウトから打たれる、(2回の)ワンアウトから送られてタイムリーというは自分の中でも屈辱に思わないといけないですよね」と右腕に厳しかった。

指揮官がまず指摘したのは初回だ。先頭の荻野が内野安打で出塁。2死二塁で4番の安田には左前適時打を許した。3ボールからの4球目。ストライクを取りに行ったストレートを弾き返された。2回には先頭のレアードに再びノースリーからカウントを整えにいったスライダーを弾き返されてソロ本塁打を浴びた。

「ボールから入りたいと高めに構えていて、そこから絶対に下にはいってはいけない」

さらに1死から四球で藤岡を歩かせると、序盤、1死一塁にも関わらず江村は犠打。2死二塁となり、荻野には中前適時打。4回は先頭のレアードに、今度は初球のストレートを右翼ホームランテラス席に運ばれてこの日2本目のソロ本塁打を被弾し、計4失点となった。

1点目と2点目は3ボールからの4球目を打たれ、4点目は初球の入り球を痛打された。指揮官は試合前、ロッテ打線について「配球を読んでというか、確率の高いものを打ってくる傾向が他球団とやっている時も結構強い。そこをどう外していくか」と語っていた。特に3ボールからのボールは狙われていた可能性が高く、甲斐と武田のバッテリーにとってはカウントを取りに行く場面での“不用意”な1球となった。

ただ、試合後、工藤監督はこうも語っている。レアードの2本目について、だ。「拓也がボールから入りたいと高めに構えていて、そこから絶対に下にはいってはいけない。そこより低めにいったから打たれちゃう」と、甲斐の意図に反するボールを投じた右腕に苦言を呈した。

ピリッとしなかった右腕。このあとの6回、2死二塁で打席にレアードを迎えた場面で、森山良二投手コーチがマウンドへと駆け寄った。ここで工藤監督は森山コーチを通じて、武田に対して“ある指令”を出していたという。

「レアードの時に『ボール球4つインサイドに投げろ』って言ったんですけど」

「3打席目、レアードの時に『ボール球4つインサイドに投げろ』って言ったんですけどね」

おそらく工藤監督は武田に打者に向かっていく姿勢と、その思い通りのボールを求めたかったのだろう。初球は要求通り、145キロの真っ直ぐをインコースへと投げ込みボール。だが、2球目、武田が投じたボールは甲斐の構えたインコースから大きく外れて真ん中高めへと向かった。

結果的には打ち損じの二飛に終わったものの、指揮官は「それが真ん中高めでしょ。打たれはしなかったですけど、自分の気持ち、思いっていうのが、持っていないとは思わないけど、勝負するんだという思いがないと難しい」と不満げな表情を浮かべていた。

もちろん、この日は苦手の二木の前に沈黙した打線も大きな敗因ではあった。初回先頭の周東が中前安打を放ったものの、5回までに放った安打はこの1本。6回に周東の四球、牧原大の右前適時打で1点を返したが、反撃がこれだけでは正直寂しい。内外、高低としっかり丁寧に投げ分けていた二木の術中にハマった形だった。

「投手の立ち上がりは制球が安定しないとかあるんで、そういうチャンスはモノにしていかないと、とは思いますけどね。僕自身も受け止めて対策を考えていかないといけないのかなと思います」と工藤監督。6カード連続勝ち越しなしとなり、この間は5勝9敗2分け。投手が踏ん張れば打線が援護できず、打線が打っても投手が崩れるという、なんとも歯車の噛み合わない戦いが続いている。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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