【中医協薬価専門部会】厚労省、ジェネリック薬の不祥事で共同開発の規制見直しに言及

【2021.05.12配信】厚生労働省は5月12日、中央社会保険医療協議会 薬価専門部会(第178回)を開いた。この中でジェネリック医薬品企業におけるG M P違反などの不祥事が相次いでいることが話題となり、これに対し厚生労働省経済課が共同開発の規制の見直しの必要性について言及した。

日薬・有澤氏「共同開発品は極めて問題」

この日の部会では、関係業界から意見聴取が行われた。

日本製薬団体連合会は、中間年改定に反対。「中間年改定の実施により医薬品の価格低下が加速化することで、新薬開発や安定供給に影響が生じ、国民医療の質が低下することが懸念される。薬価改定の対象範囲は、薬価と実勢価格の乖離率が全ての既収載品目の平均離率よりも著しく大きい品目に限定すべき」と主張した。
日本医薬品卸売業連合会は、談合をめぐる問題に関して謝罪した上で、「医薬品卸は不採算品目についても供給を行うなど、経済合理性を犠牲にしてでも安定供給を優先していることもある中、累次の薬価改定が医薬品流通体制にダメージを与えている」として、「次期薬価改定については、医薬品卸が果たしている役割や機能について適正な評価を行い、医薬品を安全かつ安定的に流通させるためのコストについて、どのようなルールで負担すべきなのかを検討し、今後の医薬品流通、ひいては医薬品の安定供給に支障が生じないようにしていただきたい」とした。

部会の議論では、まず日本医師会常任理事の松本吉郎氏が「中間改定について延長線ではなく改めて議論するという趣旨は理解する」とした上で、開発力や安定供給のための根拠となる数字について製薬企業や卸企業に示してほしいと要望した。医薬品卸売業連合会が示したコスト増への対応の必要性については、「調整幅を引き上げるべきとの提案か」と確認した。

また、ジェネリック医薬品の不祥事に関連して、「(1つの成分に対し)品目があまりにも多いことが問題につながっているのではないか」との考えを示した。

これに対し、日本製薬工業協会会長の中山讓治氏が「中間年改定でイノベーション推進は後退した」と強い懸念を示した。米国研究製薬工業協会(PhRMA)や欧州製薬団体連合会(EFPIA)も、透明性や予見性を欠くことで日本での開発を推進するための障害になっているとの懸念を表明した。

一方、日本医薬品卸売業連合会薬価問題検討委員会担当理事の折本健次氏は、新たに承認される医薬品の中には温度管理や振動制限などが必要なものが少なくなく、有効期限も短いものもあり、物流センターへの投資を含めて流通コストが増大しているとして現状への理解を求めた。調整幅の引き上げを求めているかについては、「引き上げを要望しているというよりも調整幅について改めて議論をすべきという提案だ」とした。

日本ジェネリック製薬協会会長の澤井光郎氏は、ジェネリック医薬品企業における不祥事に関しては、「企業のコンプライアンスやガバナンスの問題」との認識を表明。「決して数の問題ではないと理解している」とした。

松本氏は、重ねて、「安定確保医薬品リスト」の今後の見通しを含め、厚労省に対応を尋ねた。

これに対し厚労省医政局経済課は、安定確保医薬品リストについては「リストの見直しはあっても2年ぐらいのスパンをイメージしている」と説明する一方、ジェネリック医薬品の問題に関しては、「行政として企業にどのように守らせるのか、運用の中身も含めて検討していきたい」とするのに加えて、「従来から指摘されている共同開発品の問題については規制の問題としても対応が必要だと考えている」と話した。

日本薬剤師会常務理事の有澤賢二氏は、「製薬企業の開発意欲は国民に迅速に医薬品を届ける意味でも重要。国民負担とのバランスを考慮した上で前向きな議論が必要だ」との考えを表明。ジェネリック医薬品の不祥事に関しては「製造施設を持たない企業でも参入でききる共同開発の仕組みが品目増加を引き起こしており、1社に問題が起こると連座して供給停止が起こるという意味でも極めて問題がある」と指摘した。

最後に、健康保険組合連合会理事の幸野庄司氏が、各業界団体の主張に対して、「日本は市場実勢価格主義を取り入れている。これまで中間年改定においても、通常の改定においても7〜9%程度の乖離率があることが薬価低下につながっている。コストが増大していたりするならば、なぜこのような乖離率が生まれるのか」と疑問を呈した。「実勢価格主義のメカニズムが働いており、毎年改定はすべきだ」とした。

この問題提起に関しては、予定の時間を超過していたこともあり、座長より、「次回以降、時間を割きたい」として、細かな質疑応答は行われなかった。

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