天敵なしアライグマに警戒を 西海市内で初の捕獲 目撃情報呼び掛け

特定外来生物のアライグマ。しま模様の尻尾が特徴=長崎バイオパーク

 農作物を食い荒らしたり、従来の生態系を乱したりするとされ「特定外来生物」に指定されているアライグマ。長崎県内では県北を中心に野生化しているが、昨年、西海市内でも初めて捕獲された。天敵がおらず、タヌキやアナグマより適応力が高い“万能選手”。人を襲うこともあるため、警戒が必要だ。
 ■牙むき威嚇
 「アナグマがわなにかかっている」
 昨年12月30日午前、「市有害鳥獣捕獲の会」の水嶋政明さんの電話が鳴った。西海町太田和地区。仲間がイノシシ捕獲のため、ミカンを入れて仕掛けていたわなの中にいたのは、アナグマではなく、アライグマだった。牙をむいてこちらを威嚇し、アナグマよりも気性は荒かった。
 水嶋さんは「素人は手を出さず、専門家を頼った方が無難」と振り返る。
 アライグマは北米原産。1970年代、アニメに登場し国内でペットとしても飼われるようになったが、後に逃げ出すなどして野生化。2005年に施行された外来生物法により、輸入や飼育などは原則、禁じられている。
 ■高い適応力
 県農山村振興課によると、アライグマによる県内の農作物被害額は19年度が337万円。ピークだった10年度の1091万円から減少し、イノシシ(8157万円)やカモ(2130万円)と比べても額は大きくはない。ただ、19年度の捕獲数は2053匹で初めて2千を超えた。同課は「各市町の危機感の高まりも、捕獲増の背景にある」とみている。
 長崎バイオパーク(西彼町)は許可を得た上でアライグマを飼育している。2本足で跳びはねながら、来場者に餌をねだる人気者。その脚力で木に登り、水も怖がらない。雑食で、手先は器用。甘い物が好きでスイカの実をくりぬき丁寧に食べる。
 佐世保市では民家の屋根裏や、空き家に住みついたケースも。伊藤雅男副園長は「外来種で天敵はなく、タヌキやアナグマよりも適応力が高い“万能選手”」と表現。「逃げ出すと周辺農家に大きな被害が出る」ため、同園ではおりの中で飼育している。
 西海市によると、昨年12月以降、目撃情報などはなく、農作物への被害はないが市民に情報提供を求めている。市の担当者は「生息域や被害状況がつかめれば、重点的に捕獲などの対策を取る」と強調。餌になりそうなごみや作物を畑や民家の周囲に放置しないよう呼び掛けている。

昨年12月、アライグマが入っていたわな。標高100メートルほどの雑木林に仕掛けていた。果樹園や畑にも近い=西海市西海町太田和郷

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