竹田恒泰氏 五輪中止署名の宇都宮氏は「筋違い」「寄付金集まる」

竹田恒泰氏

声を上げた理由とは――。弁護士の宇都宮健児氏(74)が行う「五輪中止署名活動」が大きな注目を集める中、政治評論家の竹田恒泰氏(45)が8日から「五輪開催署名活動」をスタートさせた。深刻化する新型コロナウイルス禍により、現状では東京五輪の開催中止を求める世論が高まっているが、なぜこのタイミングで動いたのか。電話取材に応じた竹田氏は、宇都宮氏の発言を疑問視。その上で、政治的な思惑が垣間見えると指摘した。

――署名活動を始めたきっかけは

竹田氏(以下竹田) 宇都宮氏の署名活動を見たときに、大変筋違いだと思った。政府にも東京都にも日本オリンピック委員会(JOC)にも中止する権限はない。権限がないところに「中止しろ」って言っても何も意味がない。たぶん宇都宮氏に署名している人はこのことを知らない。弁護士として一般人をだますようなやり方はひどい。

――署名の宛先には国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長(67)以外に、菅義偉首相(72)、小池百合子東京都知事(68)らの名前がある

竹田 中止の権限はIOCにあるが、署名している約30万人のうち、ほとんどが政府や東京都に中止する権限がないと知らずに投票していると思う。しかも、デモに参加している人がいる。ネットを見ているとそんな感じ。デモで政府に中止を求める圧力をかけている。一般人をだまして盛り上げている。日本側に中止権限がないって分かっいたらこんなに盛り上がっていない。多くの人が「菅首相は何をやっているんだ」「小池都知事はいつ決断するんだ」という気持ちで参加しており、間違えた方向に世論を誘導している。

――署名の開始時期は異なるが、宇都宮氏より集まった票数は少ない(12日時点で宇都宮氏が約33万3000筆、竹田氏は約5万5000筆)

竹田 宇都宮氏は組織的にやっている。毎回共産党に担がれて、東京都知事選に出ている人だから。共産党は幹部がこぞって「五輪をやめろ」って言っているし、共産党の人たちが組織的に活動している。それに対して私は1人でツイッターや自分の番組で言っているだけだから。中止って言うのは盛り上がりやすい。現状維持が賛成なので、その人たちはわざわざ活動や署名活動はあまりしない。だから数で争おうとしたら大変不利な状況だが、こちらの目的としては賛成の数が一定数いるんだぞと伝えること。

――宇都宮氏には「政治的思惑があるのでは」との声も聞かれる

竹田 今回の活動で宇都宮氏に寄付金は集まるし、次の選挙で有利になる。非常に政治的な思惑、利権が絡まっている。正しいことを言うならまだしも、間違えたことを吹聴しているから、非常に害が大きいと思う。

――宇都宮氏は政府側から中止を求めた場合、賠償金は不要と話す

竹田 法的には払う必要が生じる。多くの識者も一致した意見だと思う。政府は中止の権限がないのに「やめます」と言うと、一方的にボイコットしたことになって、IOC側は「だったら放映権料等を負担してくれるんですね」となる。コロナの拡大が戦争相当だという理屈を絡めれば、払わなくてもいいという理屈を立てられなくもないが、日本は諸外国に比べて死者が少ないのに、この主張が通るのでしょうか。

――宇都宮氏は都合の悪いことを隠しているということか

竹田 宇都宮氏は開催したら約3000億円お金がかかると言っているが、中止になったらスポンサーへの損害賠償だけで約3500億円かかる。宇都宮氏は開催したときにかかる費用は言うけども、中止したときにかかる費用は言わない。また、署名を見ると「五輪を開催したら医療崩壊が起きて国民がみんな死ぬ」と言っている。どう思うかは自由だが、真に受けた人たち、嘘を信じてしまった人たちがたくさんいる。ネット上でも信じた人たちが「大変だ」って言っているが、科学的根拠はない。宇都宮氏はそこに触れていない。

――男子テニスの錦織圭(31=日清食品)は五輪への不安を口にした

竹田 通常の形ではできないから、できる範囲でやればいい。日本はとことん準備してIOCが「やめます」と言ったら中止にしたらいいだけ。すでに費やした約1兆円はほとんど払い終わっていて、開催してもしなくてもこのお金は戻ってこない。

【宇都宮氏「国民の命や健康を守るためのコロナ対策に全力を注ぐべき」】宇都宮氏は取材に「世論調査でも7割が再延期か中止を求めている。それを形にする一つの運動として署名活動があるのかなと思い、立ち上げた」と一連の経緯を明かし「全国的に医療がひっ迫して感染者を救うのが大変なときに五輪開催となると、五輪のために1万人くらいのスタッフが必要。国民の命や健康を守るためのコロナ対策に全力を注ぐべき」と訴えた。また、賠償金については「日本側から中止を言っても違約金は発生しない。そういう契約になっている」と説明した。

☆たけだ・つねやす=1975年生まれ。東京都出身。旧皇族・竹田家に生まれ、明治天皇の玄孫にあたる。慶応大学法学部卒業後は、憲法学・史学の研究に従事。2006年には「語られなかった皇族たちの真実」(小学館)で第15回山本七平賞を受賞した。作家として活躍する傍ら、政治評論家としも活動。「そこまで言って委員会NP」(読売テレビ)などに出演している。15年からは、皇学館大学現代日本学部で非常勤講師を務める。父はJOC前会長の竹田恒和氏。

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