今後は「逆張り投資」?それとも「モメンタム投資」?

株価が大きく下げた会社の株を買う投資方法を「逆張り(ぎゃくばり)投資」と言います。例えば、日経平均株価に採用される225銘柄のように、日々の出来高がある程度は確保されているような銘柄のうち、前の週に下落が大きかった銘柄に投資するといったやり方です。

前の週という短期間ではなく、もっと長い期間をみて年間下落率ランキングの大きい銘柄に注目するといったやり方もあります。とても単純な戦略ですが、伝統的に効果的な戦略として良く知られるものです。

しかし近年は、これとは真逆の戦略となる「モメンタム投資」の効果が高くなったと言われます。モメンタム投資とは、これまで株価が上昇してきた銘柄に投資するという方法です。今回はこの「逆張り投資」と「モメンタム投資」、今後はどちらが良いのかの予測を紹介しましょう。


逆張り投資が効果的な理由

まずは、逆張り投資が伝統的に効果的とされてきた理由からお話しします。

株価が大きく下げた銘柄を買うには“勇気”が必要です。株価が下げるには様々な理由があります。例えば、業績が悪かったという決算が発表されて失望から株安となるケースがあります。また、ある銘柄をたくさん保有していたファンドがなにかの理由で大きく売却したために需給が悪化し株安となることあります。

いずれにしても、もし自分が保有している銘柄がそのようなニュースで株価急落となったらどうでしょう。「もっと株価が下がるのでは」と不安になり、その銘柄を売りたくなる人が多いと思います。投資のプロの人に聞いても、そう考えてしまう人は少なくないようです。悪材料が出ている銘柄は直ぐに売却して気持ちを切り替え、別の好材料の銘柄に乗り換えて、負けを取り返したいと考えるからです。

そして、このように考える投資家が多いと、株価は売られ過ぎとなります。このように売られ過ぎた銘柄のリバウンドを狙った投資が逆張り投資なのです。

それとは反対なのがモメンタム投資です。これまで株価が上がってきた銘柄に投資するのですが、先ほどの逆張り投資の理屈から考えると危険な戦略にも思えます。逆張り投資の戦略は悪材料で株価が売られ過ぎとなるため、その株価のリバウンドを狙うというものです。逆に好材料でこれまで株価が上がってきた銘柄は“買われ過ぎ”になっているかもしれません。であれば、その後は株価が下げやすくなるでしょう。

モメンタム投資のパフォーマンスは?

そこで、過去のモメンタム投資のパフォーマンスはどうだったのかを検証してみました。
まず、2,200銘柄程度ある東証1部上場企業のなかで、過去1年間の上昇が大きかった銘柄の上位1割(220銘柄程度)に入る銘柄を選びます。これらの銘柄に投資した場合に、1部市場全部の企業(2,220銘柄程度)に比べて、どの程度平均的にリターンが良かったのかを月次で調べてみました。

モメンタム投資のパフォーマンスを累積したものが「累積モメンタム投資収益率」です。グラフを見ると2020年は7月にかけて矢印(緑)が示す様に上昇しています。この期間はモメンタム投資が効果的な戦略だったことを示しています。

グラフが上昇を始めたのは2020年4月からです。当時を振り返ると新型コロナ感染拡大による1回目の緊急事態宣言が発令した場面です。コロナ禍で経済活動停滞への懸念が高まる状況のなかで、株式市場でも大きく下げた銘柄に対し“売られ過ぎからの見直し買い”が入る余裕がない状況が続いたようです。反対に、これまで上昇してきた銘柄に対する安心感からモメンタム投資が効果となりました。

2020年8月(図中の〇)には累積モメンタム投資収益率のグラフが大きく下げて、モメンタム投資が厳しくなりました。当時、新型コロナワクチン開発期待から投資家の不安心理が後退して、売られ過ぎた銘柄への見直し買いから逆張り投資が優勢となりました。

更に、今年の3月まではモメンタム投資が厳しい場面が続きました。2月に1990年以来の高値となる日経平均株価が3万円を回復するなど堅調に相場が推移するなかで、強気姿勢で臨む投資家が増えて下落が大きかった銘柄のリバウンドが大きく逆張り投資が優勢な状況が続いてきました。

しかし先月(4月、図中の△)は、ようやく株価モメンタムの傾向が復活しました。では今後はどうなるのでしょうか。モメンタム投資場面が続くのか、それともまた逆張り投資が優勢になるのでしょうか。

今後を予測する指標「超過リビジョン」

筆者は、株価モメンタム予測に「来期の今期に対する超過リビジョン」という指標を使っています。

リビジョンというのは資産運用業界で“業績予想の修正”という意味です。証券業界には業績予想を仕事とする企業アナリストがいます。このアナリストがそれぞれの会社の利益を予想するのですが、今期(1期先)の利益予想額がより大きくなるだろう(上方修正)と考える企業の数より、来期(2期先)の予想額がより大きくなると予想する企業数が上回っていると、「来期の今期に対する超過リビジョン」のグラフがゼロを上回ってきます(計算方法の詳細はグラフの注3を参照)。

また、グラフが上昇するのは来期超過のリビジョンの傾向が前月に比べて強まってくることを表します。そしてグラフで示されている様に、「来期の今期に対する超過リビジョン」と「累積モメンタム投資収益率」のグラフは連動しています。来期の業績予想が強気(上方)に修正される傾向が今期を上回ると、モメンタム投資のパフォーマンスが良くなるのです。

この理由には次のことがあります。株価モメンタムは過去上昇してきた銘柄が将来も上昇を続けるということです。足元業績が良くて、それに連動して株価が上昇してきた企業を例に考えて見ましょう。この企業の将来の業績が、より一層良くなるなら、これまで株価が上がってきても、それが買われ過ぎとはならずに更に株価が上昇していくと考えられます。これが株価モメンタム現象となって現れるのです。

来期の今期に対する超過リビジョンのグラフが上昇していく環境は、来期の業績予想が今期の業績予想よりもより強気(上方)に修正される傾向となる状況なので、株価モメンタムが起こりやすいのです。

足元(2021年4月)は来期の今期に対する超過リビジョンが上昇傾向にあります。今後もモメンタム投資戦略に注目する場面と考えられます。

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