コロナワクチン予約 長崎県内混乱 「接種枠は十分」ルール順守を

ワクチン接種予約を電話で受け付ける看護師=長崎市、まさき内科呼吸器クリニック

 高齢者を対象にした新型コロナウイルスのワクチン接種予約が長崎県内でも本格化。12日は長崎市が85歳以上の予約受け付けを各医療機関で始めた。中には、複数の病院に断られた接種希望者や、前もって受け付けてしまう医療機関も。佐世保、大村両市のコールセンターは電話がつながりにくいまま、混乱が続いている。

◆長崎市◆
 多くの市町はコールセンターやインターネットで予約を受け付ける。長崎市は85歳以上の約2万7500人について、約280医療機関に直接電話する方法を採用している。
 同市銅座町のまさき内科呼吸器クリニック(真崎宏則院長)では、開院前の午前8時半ごろ電話が鳴り始め、初日だけで約30件。「接種券が届いていない」「85歳未満はまだか」といった問い合わせもあった。
 市内の女性(96)は親族が午前10時前から、かかりつけ医に電話を何度かけても話し中。約1時間後につながったときは6月分まで埋まっていたが、「予約できて安心した」。市内の女性(88)のかかりつけ医は休診日だった。「ほとんど外出しないから感染の恐れは少ない」と焦らず待つという。
 市から郵送された「接種が可能な医療機関一覧」にかかりつけ医が載っていなかった88歳男性。「電話だけでは予約できるか不安」と午前9時に近所の病院に出向くと「埋まった」と言われ、別の病院でも同様に断られた。「決まりを守って初日の朝一番に予約しようとしたのに」と怒りが収まらなかった。
 市内のある病院には数日前から何件も電話があった。「患者にお願いされると『受けられるようにする』と答えるしかない」と院長。集団接種の明確な時期を市が決めていない点を問題視し「『何としても病院で』という焦りにつながっている」とみる。
 市担当者は「予約の“フライング”はあってはならない」と指摘。84歳未満の予約受け付けを控えており、「ルールを守ってほしい」と求める。

◆佐世保市◆
 佐世保市は75歳以上の予約を取り始めた10日、委託先のコールセンターに電話が殺到。11日から受付時間を1時間延長したが、12日もつながりにくく、市職員がクレーム対応に追われた。
 「市のホームページからも予約できます。息子さんに(対応を)お願いできませんか」「お急ぎとは思いますが、時間をおいて電話を」-。連日、電話を切るとまた鳴る状況で「想定はしていたが、これほどとは…」。担当部署職員12人では人手が足りず、別の課が応援に入っている。
 市内の男性(58)は12日、母親(79)の予約を試みるが取れずじまい。「午前中に40回以上かけた。システムとして全く機能していない」と不満をにじませた。市は17日から、コールセンターの回線を増やす。
 さらに12日は予約サイトが一時的にアクセスできなくなった。データ処理を担う米企業の通信障害が原因とみられる。市はホームページから同サイトを経由しない仕様に変更し、午前10時40分ごろ仮復旧。現在は通常通り受け付けている。

市民の問い合わせに対応する市職員=佐世保市、すこやかプラザ

◆大村市◆
 4月27日に受け付けを始めた大村市。18回線あるコールセンターに「つながらない」として、大勢が市役所に詰め掛け、市は急きょその場で受け付けることにした。30日からは市コミュニティセンターに移し、複数部署を動員し大型連休中も対応。多い日は100件弱を受け付けた。
 市は「接種枠は十分にあるので慌てなくて大丈夫。電話がつながりにくい時は時間をおいてほしい」と呼び掛けている。


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