巨人・スモークにコロナ禍特例の〝ハッスルプレー禁止〟…テームズの悲劇繰り返すな

アーチ量産を期待される巨人・スモーク

これも新型コロナ禍ならではの特例か。巨人の新助っ人、ジャスティン・スモーク内野手(34)が好調をキープしている。4月下旬に一軍に合流し、10試合に出場して打率3割2分4厘、2本塁打、3打点の成績。ただ、本領発揮はこれからだろう。メジャー通算196発男の今後の大爆発を促すべく、チームではハッスルプレーをまさかの〝禁止〟。その背景には、1試合で帰国を余儀なくされたもう一人の助っ人の存在がある。

13日のDeNA戦(横浜)が雨天中止となった原辰徳監督(62)は「すべてプラスに受け止めて、いい時間に使うということですね。休養を含めてね」とポジティブに解釈。14日からの首位・阪神との直接対決に向けて手綱を締め直した。

攻撃陣では右手親指の骨折で坂本を欠くが、クリーンアップの調子は上向きつつある。主砲・岡本和は直近3試合で3発を放ち、3番の丸についても「(12日は)四球も含めて内容はすごく良かったと思いますよ。凡打の内容もすごく良かった」と指揮官も笑顔だ。そして5番を打つスモークも休養を挟みながら、コンスタントに結果を残している。

その両打ちの大砲にはさらなる大爆発が期待されるが、今は我慢の時が続く。チーム内ではスモーク限定で異例の〝ハッスルプレー禁止〟が叫ばれているのだ。3日の広島戦(マツダ)では4回に放った三塁へのボテボテのゴロで、まともに一塁へ走らず、アウトとなった。ともすれば「怠慢プレーだ」などと指摘されそうだが、チームスタッフからは「スモークはアレでいい。今は全力で走る必要なんかない」と納得顔だった。

その最たる要因は「テームズの悲劇」を繰り返さないためだ。スモークとともに新加入したエリック・テームズ外野手(34)は4月27日のデビュー戦で右アキレス腱を断裂。本人だけでなくチームにとってもショッキングな出来事となってしまった。悲劇はなぜ起きたのか。

前出のスタッフは「やっぱりコロナ禍でキャンプに参加できなかったことが大きい。集団の中で練習するのとでは緊張感もまるで違う。来日前に個人で練習していたとはいえ、追い込めているようでも、なかなか自分を追い込めない。実際、テームズは体を絞り切れていない印象もあった。スモークにも同じことを繰り返させるわけにはいかない。だから、徐々にでいいんだ」と言う。

両助っ人が来日できたのは春季キャンプ終了から約1か月後の3月29日。首脳陣は昇格時期を慎重に判断したが、やはりキャンプ不参加での合流はリスクを測り切れないのが実情だろう。それだけに、当面の間は通常であれば「怠慢」と映ってしまうこともあるスモークのプレーにも、チームでは目をつぶるというわけだ。

もちろん、その先に待たれるのはチームをV3へと導くアーチ量産。本領を発揮してもらうためにも、首脳陣もアクセルとブレーキを巧みに使い分けていく。

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