先輩が直言! 猛虎の“第107代4番打者”佐藤輝に求める「新たな主砲像」

中前打を放つ佐藤輝

助っ人・ジェリー・サンズ外野手(33)の決勝弾で13日の中日戦に2―1と快勝、貯金を今季最多の「15」とした阪神で、11日から本格的に「4番打者」として出場を続ける佐藤輝明内野手(22)も奮闘中だ。今カード2カード連続でフルに4番を全う。そんなドラ1新人には4番を務めたOBからも、これまでの概念に捉われない「新スタイル」での奮闘を期待する声が届いている。

ロースコアでも今年の阪神の勝負強さはハンパない。この日は、0―1と劣勢の7回二死走者ナシから、試合をひっくり返した。攻めあぐねていた中日・ロドリゲスに対し、7回は二死から代打・原口の四球→代走・熊谷の二盗→先頭打者・近本の同点中前適時打で同点に追いつくと、8回一死には、サンズが3番手・又吉から左中間席に9号決勝ソロ。9回を守護神・スアレスで締め貯金は最多の「15」に。矢野燿大監督(52)も「いや~盛り上がったね」と、終盤の逆転劇を若干、興奮気味に振り返った。

引き分けを挟み3連勝と再び波に乗ってきたチームで、2カード連続「4番・三塁」で出場した怪物ルーキー・佐藤輝も6回には右前打を放ち、16試合連続出塁を記録。「第107代」の猛虎の4番として開幕からこの打順を務め、現在は背中の故障で抹消中の大山悠輔(26)の代役を立派に務めあげている。

そんな佐藤輝に、球団の歴代4番打者の先輩・柏原純一氏(野球評論家)は「打つだけの選手にはなってほしくない。歴代の4番は『打つ』だけのタイプが多かった。『走れる』4番を目指してほしい」と、従来の4番打者の概念を覆す躍動を期待しているという。

自らも1986年シーズン、前カードの4番・岡田彰布の代役で9月3日の大洋戦に「第61代目」として、この打順に入った。「当時は『4番』っていうと『打てればいい』という考えが支配的で、僕もそれが当たり前と思ってやっていてしまったけれど、今の野球はそうじゃない。柳田(ソフトバンク)や鈴木誠(広島)であったり『打って、走って、守って』が4番ですよ。どうしてもその打順に入ると走れる技術あって、まだ脚が動くにもかからわず、走れる人でも、なぜか走らなくなったりする」。

もちろん、その時々で試合状況はあるが、そう唱えるのは「息の長い選手になれる」からだろう。中軸打者として“短命”で終わるだけなく、一時代を築ける確率もまた上げることができる。「これからの球界は打撃力に加え、最低でも走攻守にもうひとつ、特別な要素があること。それを最も兼ね備えた人間が4番を張る時代」と同氏は予想している。

阪神では広島時代の00年に3割・30本・30盗塁の通称・トリプルスリーを達成した鉄人・金本知憲が移籍2年目の04年から10年までの長きに渡り不動の4番に君臨していたが、年間の盗塁数自体は減少。04年以降は一桁台にとどまっている。

「タイガースにとっても新しい4番像を作るチャンス。もちろん(故障で抹消中の本来の4番)大山が4番に戻ってきても、同じ。彼も決して脚は遅くないし、走れる。2人で新しいクリーンアップ像を作れば、より洗練されたチームになる」。

佐藤輝は現在、2盗塁と走塁面でもまだまだ発展途上の段階にある。9日のDeNA戦ではサンズの左中間突破の当たりで、6秒フラットの快足を生かし、一塁から激走で一気にホームを陥れ“脚”で試合の流れを引き寄せた。4番で発揮される長所が限られるのではなく、逆に広がればそれに越したことはない。新人ながら歴史ある虎の4番に座った佐藤輝にはこれまでの主砲とは一線を画す、新しい虎の4番像構築の期待も担うことになりそうだ。

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