まん延防止見送り 長崎県・中村知事「適用基準を明確に」 政府に注文

「適用基準を明確にしてほしい」と述べる中村知事=県庁

 新型コロナウイルス対応のまん延防止等重点措置の長崎県への適用が見送られたことについて、中村法道知事は14日、県庁で報道陣に対し「大変残念。(政府は)適用の基準を明確にしてほしい」と注文を付けた。感染急拡大で医療提供体制が危機的状況にある長崎市の田上富久市長も「どういう状態になれば適用になるのか」と疑問を投げ掛けた。
 県は10日、長崎市を念頭に、まん延防止等重点措置を本県に適用するよう、政府に要請。中村知事は13日夜に西村康稔経済再生担当相から電話があったと明かし、「さまざまな状況を総合的に判断し様子を見ようとなった」との説明を受けたが、具体的な判断基準は示されなかったという。
 西村氏は14日の国の分科会で、緊急事態宣言対象地域の福岡県からの「にじみ出し」が本県の感染拡大に影響しているとの認識を示し、宣言の措置の効果を分析していると説明。中村知事は「他県の動きに連動して(適用の)判断がなされるのであれば、地域の感染防止に責任を持つ立場としては、いかがなものかと思う」と首をかしげた。
 長崎市民に外出自粛や飲食店の営業時間短縮などを要請している田上市長も定例会見で「これらを継続しなければならないとの思いを市民に共有してもらう意味でも適用してほしかった」と述べた。森崎正幸県医師会長も「長崎市は県内でも特別注意が必要とメッセージを送ることが大事」として一刻も早い適用を訴えた。
 適用されれば、時短営業の要請に応じない飲食店などには最終的に行政罰(過料)が科されるが、長崎市大黒町の居酒屋「酒趣庵長崎駅前店」の江副正弥店長(43)は「既に今月末まで休業を決めており、適用されてもされなくても状況は変わらない」と冷静に受け止めた。一方で「知り合いの店でクラスターが起きた。まん延防止より緊急事態宣言を国に求めて対策を徹底してほしい」と危機感をにじませた。

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