「使命感だけでは難しい」 介護現場の不安と苦悩 コロナ禍、高齢者と向き合う 長崎県民主医療機関連合会アンケート

介護現場の厳しい状況を語る滝川さん=県庁

 長崎県民主医療機関連合会(平野友久会長)は14日、介護事業者を対象に新型コロナウイルスの影響を尋ねたアンケートの結果を公表した。現場の声からは感染の不安を抱えつつ、重症化リスクの高い高齢者と向き合う苦悩が浮かび上がった。
 アンケートは1月27日~2月3日に実施。県のホームページに掲載している介護事業所の一覧から無作為抽出した千事業所に用紙を送付し、179事業所から回答があった。
 経営面に関しては、「一定影響がある」(95事業所)「深刻である」(12事業所)と6割が新型コロナの影響があると回答。第3波が始まった昨年12月ごろから利用者が減少した事業者が増えている。
 感染対策で困っていること(複数回答)では、「サービスの提供方法」が82事業所で最多。マスク着用を拒む認知症利用者への対応や家族らに面会制限への理解を求める難しさのほか、スタッフが濃厚接触者などになった際の人手不足を心配する事業所も多かった。
 自由記述欄には「いつ自分が感染をし、体力の弱った方へ感染させてしまわないか不安」「精神的負担も大きく、介護職のため生活への制限も大きい。仕事を続けていくには使命感だけでは難しい」といった切実な声。また、コロナ感染が疑われる利用者の訪問看護の際、スタッフの家庭状況を鑑み「誰を訪問させるか」決めなければならない悩ましい実情も垣間見えた。
 14日の発表会見の場で、「健友会ヘルパーステーション」(長崎市)のサービス提供責任者、滝川奈津美さん(35)は「医療と同じように介護の現場も大変な状況にあると知ってもらいたい」と訴えた。
 滝川さんは市内のコロナ病床が逼迫(ひっぱく)している現状に言及。利用者の陽性が確認された場合に「今までなら入院できていた人が入院できなくなった時、私たちは一番大変になってくる。(陽性の)利用者を介護する時にどうすればいいのか」と不安を語った。

 


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