落選?

 「…を群馬、石川、岡山、広島、熊本の5県に適用する方針を固めました…」-通信社の出稿案内のアナウンスを聞きながら思った。「長崎」がない。まるで「落選」を告げられたような、この妙な感じは何なのか▲県が政府に要請していた新型コロナの「まん延防止等重点措置」適用が見送られた。医療体制が危機に瀕(ひん)している本県のSOSは聞き流されてしまった。もう少し様子を見ましょう、と▲緊急事態宣言を出さずに同等の私権制限が可能なこの仕組みは、何回か書いたが政府の側に極めて好都合な制度だ。個人的には、どさくさに紛れて“脱法行為”を法律に書き込んで合法化した巧妙な悪知恵の産物だと考えている▲これが正当化できる根拠があるとすれば、それは「転ばぬ先のつえ」に尽きる。せめて、自治体側の求めに応じて機敏に発動されるのでなければ、いよいよ存在意義は怪しい。中村法道知事が不服顔で疑問を口にしていた。もっと怒っていい▲話には続きがある。まん延防止の対象に加わるはずだった岡山と広島は専門家会議の異論を受けて、緊急事態宣言に対応が格上げされた▲深刻度は低めに、エリアは限定的に、話はできるだけ小さく…そんな意図ばかり透けて見える。何を目指して仕事をしているのか、そこは少しも見えない。(智)


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