避難勧告を廃止、指示に一本化 改正災害対策法が施行へ

新たな避難情報と警戒レベル

 災害時に市町村が発令する避難勧告を廃止し、避難指示に一本化することなどを定めた改正災害対策基本法が、20日に施行される。これに合わせ政府が公表した新たな指針は、避難場所などへの「立ち退き避難」を基本としつつ、災害の種類や状況によって自宅の安全な場所にとどまる「屋内安全確保」も選択肢として示し、住民らに適切な判断と行動を促している。

 避難勧告と指示に関する同法の規定が見直されるのは、1961年の制定以来初めて。

 改正法の施行に伴い、これまで勧告が出されていたタイミングで指示が発令されることになり、政府は「避難指示で必ず避難を」と強調している。併せて、避難準備・高齢者等避難開始を「高齢者等避難」に、2年前に新設された災害発生情報を「緊急安全確保」に改称する。

 新指針は、これらに該当する警戒レベル(5段階)について定めている。取るべき行動は、高齢者等避難(警戒レベル3)で「危険な場所から高齢者等は避難」、避難指示(同4)では「危険な場所から全員避難」とした。

 一方で、災害が発生したか切迫している最も危険な状況である緊急安全確保(同5)は、必ず発令されるとは限らないと説明。少しでも安全な部屋に移動することなどを例示したが、「避難し遅れた居住者がとる次善の行動」で「身の安全を確保できるとは限らない」とし、レベル4以下との違いを明確にしている。

 指針ではこのほか、洪水や高潮、土砂災害などの際は、小中学校などの避難場所や知人宅、ホテルなどへの「立ち退き避難」(水平避難)が基本とした。洪水と高潮については、自宅に倒壊の危険がなく、浸水が及ばない高さの居室があることなどがハザードマップで確認できれば、上階などでやり過ごす「屋内安全確保」(垂直避難、待避)も可能とした。その際、しばらく孤立することを念頭に水や食料を十分に備蓄しておくことも条件に加えている。

 一方、土砂災害と津波は住宅などを流失、全壊させる恐れがあり、屋内にとどまっていては身の安全を守れないため、立ち退き避難を求めている。

 内閣府は「新たな運用で警戒レベル5と4の区別を明確にしており、レベル4までに確実に避難してもらいたい。屋内安全確保は住民の判断で計画的に行うものであることに注意してほしい」と呼び掛けている。

 一方、市町村に対しては「避難情報の発令地域を『全域』などとせず、災害のリスクに応じて可能な限り絞り込むことが重要」と説明。危険性の低い地域も対象にすると、避難場所の混雑や渋滞を招き、情報への信頼を損ねる恐れもあるとしている。

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