最下位DeNAで壊滅的な投手陣 元大洋のエースが指摘する低迷の“元凶”とは…

DeNA・三嶋一輝【写真:荒川祐史】

大洋時代にエースとして活躍した遠藤一彦氏は「根本的な原因がある」と言う

三浦大輔監督就任1年目の今季、最下位を低迷し続けているDeNA。特にチーム防御率が12球団で唯一4点台(4.67・5月16日現在)の投手陣は壊滅的だ。かつてDeNAの前身である横浜大洋ホエールズで長年エースとして活躍し、1997年から7年間はコーチも務めた野球評論家の遠藤一彦氏は「DeNAの投手に共通する不振の原因がある」とズバリ指摘する。

昨季途中から不振の山崎康晃投手に代わって守護神を務めている三嶋一輝投手は、今月9日まで15試合に登板して防御率0.64の好成績を残していたが、11日の巨人戦では同点の9回に伏兵の若林、吉川に連続で被弾して敗戦。翌12日も2点リードの9回に岡本に痛恨の同点2ランを浴び、2戦連続の背信投球となった。

「去年抑えに回ってからの内容に比べると、今年の三嶋は良くない。去年を100とすれば、今年は85くらいでしょう」と遠藤氏は言う。そして「根本的な原因がある。ベイスターズの投手はみんな同じだが、おそらく本人たちは分かっていない。だから、毎年同じ失敗を繰り返している」と語気を強める。

野球評論家の遠藤一彦氏【写真:荒川祐史】

「みんなシーズンの疲労を取らないまま、翌年へと入っていってしまう」

遠藤氏がDeNA投手陣共通の不振の原因と見ているのは、疲労の蓄積である。「みんなシーズンの疲労を取らないまま、翌年の自主トレ、キャンプ、オープン戦、ペナントレースへと入っていってしまう。それでも若いうちはある程度は動けるが、真の疲労が取れていないからパフォーマンスが落ちて故障にもつながる」と指摘する。

実際、DeNAの投手はルーキーイヤーに鮮烈な活躍をしながら、翌年以降に故障などで尻すぼみになるケースが散見される。左腕の浜口遥大投手は1年目の2017年に10勝(6敗)を挙げたが、今のところ、2桁勝利はこの年だけで、昨季は2勝3敗に終わった。

2019年に7勝(6敗)した上茶谷大河投手も昨季は2勝3敗。今季は1軍で4試合に投げているものの、0勝3敗、防御率10.69と不振で、現在は2軍調整中だ。2018年に11勝5敗で新人王を獲得した東克樹投手は、翌2019年に左肘の不調で4勝2敗に終わり、2020年2月にはトミー・ジョン手術。現在リハビリが続く。エースの今永昇太投手も昨年10月に左肩のクリーニング手術を受け、今季開幕に間に合わなかった。

「終わった直後は解放感に包まれ疲労を感じにくい」

「山崎にしてもプロ1年目にあれほど落ちていたツーシームが、2年目から落ちなくなった。シーズン中は試合に没頭しているし、終わった直後は解放感に包まれ疲労を感じにくい。しかし、疲労が残っていればパフォーマンスは半減する」と遠藤氏は言う。ただし、「2桁勝利というのは、まぐれではできない。それなりの技術がある証拠。DeNA投手陣が疲労の取り方を改善できれば、強力なスタッフに生まれ変われる可能性はある」とも付け加えた。

1年間フルで活躍した投手が疲労を取るには、その年の12月の過ごし方が重要だと言う。現役時代に2年連続での最多勝を含め、1982年から87年まで6年連続2桁勝利をマークした遠藤氏は、プロ3年目から現役引退まで、毎年12月に1週間から10日間ほど、同僚の齊藤明雄氏と一緒に“山ごもり”を行っていた。

「1月の自主トレに入る前の準備段階として、疲れを取りながらトレーニングをするのが目的でした。休んでいるだけでは疲れは取れませんから」。神奈川・箱根の仙石原温泉に宿を取り、標高1212メートルの金時山を毎日片道1時間かけて登った。下山して風呂につかり、午後は地元のゴルフ場で3ホールほど走り込むのが日課。ただ休むのではなく、体を動かしつつ疲労を除去する“積極的休養”を実践していたのだ。

遠藤氏は現役時代、打線の援護に恵まれず優勝こそできなかったが、横浜大洋ホエールズ一筋に15年間奮闘。今もチーム愛は人一倍強い。その声が現役投手に届いてほしい。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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