客船誘致へ岸壁整備 横浜の新港・大黒ふ頭で 五輪想定し18年度供用開始

 クルーズ客船を横浜港に誘致するため、国内最大級の大さん橋国際客船ターミナル(横浜市中区)に次ぐ新たな港湾施設の整備が進んでいる。市は東京五輪が開催される2020年に外国客船の寄港が増えると想定。18年度中に新たに二つの客船岸壁の供用を目指すとともに外国人ら富裕層の受け入れ態勢を強化し、地域経済の活性化を狙う。

 市は、横浜・みなとみらい21(MM21)地区にあり、横浜赤レンガ倉庫に近い新港ふ頭(同市中区)に新たな客船ターミナルを公民連携で整備する。老朽化した9号客船バースを改修し、大さん橋と同様に客船が着岸できるようにする。整備事業者の公募とともに既存の岸壁を撤去する段取りで、16年度予算案に18億4700万円を計上した。

 一方で、一度に4千人もの乗客を運ぶ超大型客船は横浜ベイブリッジをくぐれない。そのため、市内が一望できる場所として橋の外側にある大黒ふ頭(同市鶴見区)の自動車専用船の岸壁を客船向けに改修する。同予算案で1億6200万円を計上した。

 背景にあるのが先の東京五輪だ。1964年の開催時には、開会式に合わせて大さん橋に「オリアナ」(4万2千トン)、「アイベリア」(2万9千トン)など5隻の客船が同時に入港。訪日外国人客のホテル不足を補った経緯がある。市は客船の受け入れ態勢を整え、富裕層が多い乗船客の観光や買い物などの新たな需要を掘り起こしたい考えだ。

 また、近年では中国人観光客を乗せたクルーズが盛んだ。博多港の寄港回数は昨年、259回と前年の115回から倍増し、12年連続1位だった横浜港を抜き国内最多となった。横浜港は18回減の127回にとどまり、長崎港(131回)にも抜かれて3位となった。だが、市港湾局は「世界一周クルーズや富裕層が乗船する豪華客船などは首都圏への寄港ニーズが確実にある。客船が混み合うシーズン中でも着実に受け入れたい」と力を込める。

 こうした客船誘致策による経済効果に、地元の商店街の期待は高まる。横浜中華街発展会や元町SS会、山下公園通り会、馬車道商店街などは、4月から大さん橋国際客船ターミナルの指定管理者となる横浜港振興協会などと連携を始めた。「横浜には世界に誇るバーやレストランがある。ゆったりと巡ってもらえるようにしていきたい」(吉田町名店街会)といった声も上がる。

 戦前から戦後にかけて、客船で横浜港に訪れた外国人観光客は箱根や鎌倉などの観光名所を楽しんだ。県観光部は「東京五輪をきっかけに、外国人観光客の誘致にさらに力を入れていきたい」と話している。

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