宇宙を漂う紫色の霞ようなHII領域「DG121」

【▲ HII領域「DG121」(Credit: ESO)】

紫色の煙が漂うように見えるこの天体は、とも座の方向に位置するHII領域の「DG121」です。

HII領域は輝線星雲の一種で、若く重たい星などが放射する強い紫外線によって電離し、この様な姿に見えるのです。HII領域は惑星状星雲や渦巻銀河の様な形がはっきり決まった天体ではなく、不規則な形をしています。また、画像の中央左上付近に輝くのは、DG121で一番明るい恒星「HD 60068」を示しています。

DG121のようなHII領域は、集まったガスや塵から星が次々に生まれる「星形成領域」であり、数百万年の間に数千個の星々が誕生すると考えられています。やがて若い星々の恒星風によってガスや塵が吹き散らされたり、質量の大きな星が超新星爆発を起こしたりすることで、DG121の今の姿は影も形もなく消えてしまいます。

このDG121の美しい姿を撮影したのは、チリのパラナル天文台にあるESOの「超大型望遠鏡(VLT)」です。搭載されている観測装置「FORS2」によるHα線を含む4つの可視光波長で捉えたもので、残念ながら肉眼ではこの様な”はっきりとした紫色の煙”には見えません。

Image Credit: ESO
Source: ESO

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