円通寺 〜 名僧・良寛が修行した玉島にある古刹。サツキやモミジ・サクラも見どころ

名僧として知られ、多くの人に敬われる江戸時代の僧侶・良寛(りょうかん)。

その良寛は、倉敷市にゆかりがあることを知っていますか。

実は、良寛は倉敷市にある寺で約12年間修行していたのです。

その寺が、市内西部・玉島地区にある「円通寺(えんつうじ、圓通寺とも)」。

奈良時代に起源がある歴史のある寺です。

現在も良寛の修行地として、多くの観光客が訪れます。

また円通寺は歴史ある本堂、見応えのある庭園、四季折々の花や木々が楽しめる名所としても有名です。

円通寺の魅力と歴史を紹介していきましょう。

円通寺は玉島の白華山にある古い寺院

円通寺は、倉敷市西部・玉島地区にある古い寺院です。

曹洞宗(そうとうしゅう)の寺で、山号(さんごう)は「補陀洛山(ふだらくさん、ほだらくさん)」。

本尊は聖観音菩薩(しょうかんのんぼさつ)で、通称「星浦観音(ほしうら かんのん)」とも呼ばれ、国の重要文化財に指定されています。

円通寺公園

円通寺があるのは市役所 玉島支所の南西およそ1.3キロメートルの地点。

白華山(はっかさん)と呼ばれる、玉島の町や工業地帯・瀬戸内海が見渡せる標高90メートルの山の上です。

円通寺は岡山県指定の史跡となっており、周辺は「円通寺公園」として整備されています。

また境内は岡山県指定史跡、本堂と青銅露座地蔵菩薩坐像(せいどう ろざ じぞうぼさつ ざぞう)は倉敷市指定文化財で、円通寺公園は岡山県指定の名勝です。

円通寺は、奈良時代の僧・行基(ぎょうき)が白華山上に観音像を祭ったことが起源。

江戸時代中期の元禄(げんろく)年間、良高(りょうこう)という僧によって再興されて円通庵という寺院となり、正徳4年(1714年)より円通寺と名乗りました。

また円通寺は、複数の霊場巡りの札所にもなっています。

  • 中国観音霊場:七番
  • 山陽花の寺二十四か寺:十七番
  • 備中良寛さんこころの寺:一番
  • 備中浅口西国観音霊場:一番
  • 百八観音霊場:九番

円通寺では、毎月18日に「観音縁日(かんのん えんにち)」をおこなっています。

そのうち、5月18日・11月18日は「花観音」としているんです。

円通寺では、さまざまな行事がおこなわれています。

行事についての詳細は、円通寺 公式サイトを見てください。

名僧・良寛の修行地

良寛像

円通寺は、名僧として知られる良寛(りょうかん)が修行したことで知られています。

良寛は江戸時代中期の宝暦8年(1758年)に、越後国 出雲崎(現 新潟県出雲崎町)で生まれました。

良寛ら修行僧が寝泊まりしていた「良寛堂」

越後で国仙(こくせん)に出会い、良寛は国仙が住職を務めていた備中国の円通寺に修行に来て、国仙に師事します。

良寛が円通寺で修行したのは、22〜33歳までの約12年間です。

昭和56年(1981年)、境内に良寛像が建てられました。
原作は、高梁市備中町出身の彫刻家・宮本隆(みやもと たかし)です。

なお倉敷市内には良寛ゆかりの地として、ほかにも長連寺(ちょうれんじ)があります。

長連寺は、良寛の師・国仙(こくせん)が再興した寺です。
そのため良寛も、長連寺に足を運んだといわれています。

円通寺の見どころ

境内図 (提供:円通寺)

円通寺の境内は広く、さまざまな建造物などがあります。

そのなかから、円通寺の見どころとなるスポットを選抜して紹介しましょう。

本堂(倉敷市指定重要文化財)

本堂」は、茅葺(かやぶき)屋根で、歴史を感じる趣ある雰囲気。

江戸時代中期に建てられたもので、倉敷市内の寺院で最大規模の本堂とされています。

建築時の姿を良好な状態で残しており、大変貴重な建物のため倉敷市の重要文化財に指定されました。

本堂には、本尊の「星浦観音」こと聖観音菩薩立像が安置されています。

本尊の聖観音菩薩立像(星浦観音) (提供:円通寺)

聖観音菩薩立像は、国指定重要文化財です。

この聖観音菩薩立像は、行基の作と伝えられています。

なお、菩薩立像は一般公開されていません。

石庭

石庭(せきてい)」は、境内入り口の汐見門(しおみもん)から本堂や良寛堂に向かっていく途中にあります。

斜面にたくさんならんだ自然石を上手に活用した、美しい庭園です。

斜面のふもとには「鶴亀池」という池があり、春にはショウブなどが咲きます。

青銅露座地蔵菩薩坐像(倉敷市指定重要文化財)

石庭の斜面の上にあるのが「青銅露座地蔵菩薩坐像(せいどう ろざ じぞうぼさつ ざぞう)」です。

台座からの高さは、と約2.2メートルで、京都の近藤播磨(こんどう はりま)・藤原定延(ふじわら さだのぶ)の制作と記されています。

制作年は、江戸時代中期の宝暦8年(1758年)です。

なお青銅露座地蔵菩薩坐像は、倉敷市指定重要文化財になっています。

白華山山頂広場(白華石と愛宕社、良寛像)

青銅露座地蔵菩薩坐像のある斜面をさらに登っていくと、やがて白華山の山頂に着きます。

山頂部は広場になっていて、一番奥に建っているのが「愛宕社(あたごしゃ)」です。

愛宕社

愛宕社は将軍地蔵尊(しょうぐん じそう そん)を祭っています。

愛宕社は、かつて円通寺の三世・良機が山頂に建てた愛宕堂を復興・再建したものです。

また広場の中央あたりに、大きく平たい岩があります。

これが円通寺の起源に関わる「白華石(はっかせき)」です。

白華石

奈良時代に、有名な僧・行基が発見。
観音菩薩が降臨し、台座とする石として祭りました。

以降、円通寺のある白華山は神聖な地となったのです。

さらに山頂広場にも、良寛像がありました。

童(わらべ)と良寛像

童と良寛像」は、子供たちと遊ぶ良寛の姿を像にしたものです。

良寛は子供たちを大変かわいがり、よくいっしょに手鞠(てまり)などで遊んでいたと伝えられています。

童と良寛像は、昭和41年(1966年)に建てられました。

重要無形文化財技術保持者の人形技師・平田郷陽(ひらた ごうよう)の作で、高さ2.6メートル、重さは6トンです。

玉島星浦白華苑

玉島星浦白華苑(たましま ほしうら はっかえん)」は、境内の南端にあります。

令和3年(2021年)1月に造成された、新しいスポットです。

白華観音菩薩像

白華観音菩薩像弥勒菩薩像(みろくぼさつぞう)が建てられており、玉島の町や海のほうを向いています。

弥勒菩薩像

円通寺の仁保哲明(にほ てつめい)住職の話では「観音菩薩は今の幸せ、弥勒菩薩は未来の希望をそれぞれ願っている」とのこと。

玉島の町の安寧と、新型コロナウイルス感染症の終息を願っており、地域の未来を見守っているのです。

白華苑からの見晴らしはすばらしく、町や海が一望できます。

日の出スポットでもあり、とくに正月の初日の出詣はおすすめです。

境内や円通寺公園の花・紅葉

円通寺の境内の南西側の斜面一帯には、さまざまな花が植えられています。

3月下旬〜4月上旬は、サクラ
4月中旬〜5月中旬には、サツキ

とてもたくさん植えられているので、満開になるととても美しい光景になります。
見晴らしもいいので、景色とともに花が楽しめるのも魅力ではないでしょうか。

サツキ

また境内の本堂・良寛堂周辺にもサクラやサツキが植えられています。

さらに、境内の本堂・良寛堂周辺にはモミジもたくさん。

秋の紅葉時季には、見事に赤くなったモミジが楽しめます。

また春〜夏の深緑の青モミジも、すがすがしくておすすめです。

境内の青モミジ

仁保住職の話では、石庭をはじめ、境内に自生する青々としたコケも美しくおすすめとのこと。

円通寺の御朱印

円通寺の御朱印

円通寺では、参拝時に御朱印をいただけます。

御朱印が欲しい場合、参拝したら本堂の向かって右側にある寺務所(じむしょ)に行きましょう。

円通寺で御朱印をいただくとき、300円の納経料を納めてください。

玉島を代表する名所のひとつ・円通寺

古代から続く信仰の地、良寛が修行した歴史ある場所、そして四季折々の美しい自然と壮大な景色が楽しめる場所。

さまざまな側面があるのが、円通寺の魅力ではないでしょうか。

ぜひ、いろいろな楽しみかたのある円通寺に訪れてみてください。

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