「一年漁師」で奮闘 ラーメン凪 サンフランシスコ店店長・平山さん 雲仙・南串山 煮干しの現場知り、スープ作りに生かす

煮干しや雲仙産野菜などを煮込んだスープでラーメンを作る平山さん=雲仙市南串山町、天洋丸事務所の調理室

 東京を中心に国内外で煮干しラーメン店などを展開する「ラーメン凪(なぎ)」の米サンフランシスコ店店長、平山圭悟さん(37)が長崎県雲仙市南串山町の巻き網漁業会社「天洋丸」(竹下千代太社長)で期間限定の「一年漁師」として就労。スープ作りの腕を磨こうと、原料となるカタクチイワシ漁と煮干し加工の現場に身を投じている。
 天洋丸は、橘湾内で煮干し加工用のカタクチイワシなどを取っている中型巻き網船団。飲食店従業員の研修や漁業に興味がある人の人生経験の場として、1年間を目安に漁業に就く「一年漁師」を今年3月から募集している。
 平山さんは、新型コロナ禍で昨年3月に米国から一時帰国し、東京でスープ製造を担当。ラーメン凪と天洋丸の社長同士が知り合いだった縁で、今年3月中旬から3カ月間、天洋丸に出向している。
 「漁と煮干し作りを経験できることは貴重な財産になるはず」。“海なし県”山梨で育った平山さんは「漁師の仕事に漠然と憧れていた」が、まさか実現するとは思いもしなかったと言う。平日は漁網の補修や漁船の点検、養殖魚への餌やりをして、週末は休み。湾内にカタクチイワシの群れが入ると夜間に出漁、早朝に水揚げして煮干しに加工している。
 漁では船の揺れや船酔いに苦しみながら、網の引き揚げを手伝う。「船上で邪魔にならないよう動くので精いっぱい。漁師は海を相手にその場その場で判断する職人仕事で、マニュアル化されたラーメン作りとは全然違う」と、新鮮な世界でもまれている。
 休日は、雲仙市内を巡って野菜や肉などの食材を集め、スープの材料や具に加えられないか研究。サンフランシスコ店では豚骨ラーメンを提供しているため、豚骨や鶏がらからだしを取る小浜ちゃんぽんも参考にしている。漁師仲間に自慢のラーメンを振る舞うこともあり、「船で足手まといになっているので、せめてもの恩返し」とほほ笑む。
 平山さんは6月中旬まで漁師を続け、その後は米国に戻る予定。「少しずつ海を知ることができている。雲仙は煮干しだけでなく良い食材に恵まれているので、それを発信する手伝いができないか考えたい」。海と調理場で奮闘している。

煮干しを餌にしている養殖サバ「ニボサバ」に餌やりする平山さん=雲仙市南串山町の橘湾

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