【追う!マイ・カナガワ】一方通行の標識 「自転車を除く」表記なくていいの?

 一方通行の標識に「自転車を除く」の表記がない場所が多いが、自転車が通れる道なら付けるべきだ─という疑問が、横浜市旭区に住む会社員男性(59)から「追う! マイ・カナガワ」取材班に寄せられた。男性が利用する相鉄線希望ケ丘駅(同区中希望が丘)周辺の3カ所の一方通行道路で自転車が逆走する姿が散見され、実態にそぐわない標識があることを以前から気にしていたという。

■実際に見てみると…

 記者は4月下旬の日曜日、男性が指摘した一方通行の3カ所を訪れた。いずれも「自転車を除く」の表記はない。

 同駅南口で確認すると、自転車の走行は15分間で6台、うち2台が逆走自転車だった。近くを歩いていた女性に聞くと、「平日朝は特に自転車の通行量が多い。近くのスーパーマーケットや駐輪場への行き来に便利なので、逆走する気持ちは分かる」という。

 その後、同区の関東職業能力開発促進センター近くと、中希望が丘の住宅街の2カ所の一方通行でも逆走する自転車を見掛けた。

 同センターそばで大学1年の女子学生(19)に声を掛けると、「自転車も対象とは知らなかった。片側から通れないとなると遠回りが必要。車通りも少なく、迷惑を掛けるわけでもないのに」と驚いた様子だ。

 取材班に疑問を寄せた男性は「いずれの一方通行でも危ない思いをしたことはない。自動車とすれ違う幅があるなら、いっそのこと『自転車を除く』の標識を新設して、通れるように変更したらいいのに」と首をかしげる。

 旭署に問い合わせると、確かに2015年以降、今年4月末まで、この3カ所で自転車が絡む人身事故は発生していないという。

■経緯は不明

 自転車が逆走しても問題なさそうな一方通行の道路は、ほかにもたくさんある気がする。どうしてこんな現状が長年放置されているのだろう。

 神奈川県警交通規制課によると、一方通行標識や「自転車を除く」の表記などは、道路の利用状況を署員が確認し、近隣住民らの意見を踏まえて決定される。

 旭区の3カ所の一方通行標識は1972、75、2004年ごろにそれぞれ設置されたようだが、その決定経緯については、設置後3~5年分しか署にも残っておらず、なぜ自転車も含む一方通行なのかは不明のままだった。

 では、「自転車を除く」の標識が付いている一方通行はどれぐらいあるのか。同署の交通課長に聞くと、同区内で自転車は通れることを明示しているのは、一方通行道路の2割弱とのこと。つまり、自転車の逆走は各地で起こっている可能性があるということだ。

 県警は、地域住民らが標識の変更を申し入れる場合は、各署の交通課で取り扱って検討しているという。

 しかし、道路の実態に合わせて「自転車を除く」の標識を増やせるのかと問うと、「道路幅員など環境が変わらないまま標識だけを変えると、交通事故が増える」との見方を示され、積極的に増やす方針はないようだ。

■取り締まりよりも

 なぜ増やせないのか。取材を進めると、自転車に関するルールは近年、厳罰化の方向にあることが分かってきた。

 自転車が絡む事故が後を絶たない状況を受け、15年の道交法改正では、免許制でない自転車の運転に関する違反への対策が強化された。

 「危険行為」となる一方通行の逆走や一時不停止、信号無視などで、3年以内に2回以上摘発されると、運転免許センターなどで交通安全講習を受けることが義務付けられた。講習を受けなければ罰金も科せられる。

 背景には、スマートフォン操作や、イヤホンで音楽を聴きながら運転するなど、免許を必要としない手軽な自転車利用者のマナー低下が深刻な問題となっていることがある。

 そうした中で、一方通行での自転車の通行を緩和することは難しいのだろう。

 記者は一方通行の逆走などで警察による厳罰化が進むと聞いて少し心配になったが、ある警察関係者は「今はまだそうしたルールを周知している段階。取り締まりよりも市民に知ってもらうことが大切」と説明した。その上で、自転車もときに死亡事故を引き起こす危険をはらむことを念頭に、「自転車による一方通行の逆走は、全国的に禁止。どうしてもその道を通る必要があるなら、自転車を押して歩いてほしい」と呼び掛けている。

■取材班から

 記者自身もよく自転車に乗るので「逆走したほうが近道」の意見も理解できるとの思いで取材した。

 一方通行路をゆっくり散策すると、警戒しつつ徐行する乗用車や、無邪気に走り回る子どもたちの姿が。まずは周囲をよく見て、事故を起こさないよう安全運転を心掛けたいとあらためて思った。

© 株式会社神奈川新聞社