旧野﨑家住宅 〜 塩田王の約200年の歴史を持つ、国指定重要文化財

旧野﨑家住宅、と聞いたらどんな場所を思い浮かべますか?

名前だけ聞くと「ただの家かな?」と思ってしまうかもしれませんが、実はすごい場所なんです!

旧野﨑家住宅では野﨑家の塩の文化を目で楽しめたり、日本庭園の素晴らしさを感じたりとたくさんの魅力にあふれ、いたるところまで堪能できます。

塩の歴史を学ぶのも良し!雰囲気を楽しむのも良し!

何回訪れても飽きさせない要素が盛りだくさんなので、さまざまな目的を持って訪れることも。

この記事では児島の高校である、わたしたち倉敷鷲羽高等学校の生徒が、実際に行ってみて「こんなところが魅力的だ!」と感じた、旧野﨑家住宅のおすすめポイントを紹介していきます!

この記事は倉敷鷲羽高等学校2年次生 総合的な探究の時間「児島未来学」の生徒による寄稿記事です。一般社団法人はれとこ編集部が再編集し、公開しています。

広さ約3,000坪の国指定重要文化財「旧野﨑家住宅」

旧野﨑家住宅はかつて塩田王(えんでんおう)と呼ばれた野﨑 武左衛門(のざき ぶざえもん)が建てた、広さ約3,000坪(約10,000平方メートル:野球場一面分)もある巨大な家です。

江戸時代後期に建てられ、日本の国指定重要文化財に指定されています。

また、時期によってさまざまなイベントを開催。

たとえば、私たちが訪れた2021年3月には、雛祭りのイベントが期間限定で開催されており、きれいで大きな雛人形を見ることができました。

以下の写真の雛人形は享保雛(きょうほびな)と呼ばれる雛人形です。

大きさは約80センチメートルもあり日本最大級の雛人形!

初めて見たときに、その大きさに驚くと思います。

旧野﨑家住宅の入り口には横の長さ約26メートルの「長屋門」が出迎えてくれます。

取材時は2021年1月3日だったので、門の前に門松が置かれていました。

それでは、さっそく中に入っていきましょう!

心惹かれる和の雰囲気を感じる庭園「枯山水」

旧野﨑家住宅の庭園は、枯山水と呼ばれる庭園です。

苔むした感じが、和の雰囲気を感じさせてくれます。

また、松・楓・杉など四季折々で見られる木が生えているので、訪れるたびに違う雰囲気を感じられるのも魅力のひとつです。

以下の写真の岩がどんな形に見えますか?

旧野﨑家住宅の庭園には、訪れた人が楽しめる工夫があり、上の写真の岩はカメが泳いでいるところを表現しているそうです。

ちょうど木で隠れているところが顔になっていて、手前に左手が見えています。

言われてみれば、カメにも見えてきますよね。

他にも、カエルに見える石もあるそうなので、ぜひ探してみてください!

庭園を進んでいくと、高さ12メートル・横幅50メートル以上ある石垣が見えてきます。

なんと、約6,000〜7,000個もの石をひとつずつていねいに組み立てて作られた石垣です。

1900年頃に建てられ、今もその形をずっと残し続けています。

近くで見ると、すごく高くてしっかりと作り込まれているのが圧巻の迫力でした!

また、石垣のなかに一つだけ扇形の石が組み込まれています

隠れミッキーならぬ隠れオッギー(扇)ですね!(笑)

扇形の石を見つけるのも楽しみのひとつです。

野﨑家塩業歴史館で江戸時代の歴史に触れてみよう

歴史資料館には、塩作りに関する資料や江戸時代からの民具、当時の貴重な映像など、さまざまなものが展示されています。

こんなに大きい岩塩まで!

「いったい何キログラムあるのだろう?」と気になるのでは?

歴史資料館では、クイズ形式で楽しみながら歴史を学ぶことができます。

答えは、実際に訪れてみて確認してみてくださいね!

下の写真の人物は、旧野﨑家住宅を築いた野﨑武左衛門です。

彼は、新田開発や製塩業などで功績をあげ、「塩田王」とも呼ばれています。

しかし、もともと名字は野﨑ではありませんでした。

味野浜と赤﨑浜の塩田を作り上げたことから、味野の「」赤﨑の「」を組み合わせて「野﨑」の姓を頂いたそうです。

旧野﨑家住宅の近くには野﨑記念碑(野﨑武左衛門翁旌徳碑)があり、製塩業をしている人たちが野﨑武左衛門の功績を称えるために建てたそうです。

また、当時の台所には江戸時代から使われていた道具なども展示されています。

何年も昔のものが、かなりきれいな状態で残っていることはすごいことですね。

アイスクリーム製造機をはじめ、「この時代にそんなものまであったんだ」と思うようなものがたくさん置いてあります。

なぜ、旧野﨑家住宅は一般のかたに貴重な歴史資料を開放しているのでしょうか?

旧野﨑家住宅が開放している理由や想いなど、学芸員の三宅さんにお話を聞きました。

旧野﨑家住宅で働く学芸員の三宅さんに質問してみた!

表書院の縁側に座り、庭園を眺めながら学芸員の三宅さんにインタビュー。

旧野﨑家住宅が伝えたい想いや、おすすめポイントについて聞きました。

旧野﨑家住宅に訪れた人に伝えたい想い

──旧野﨑家住宅に訪れた人に、特に知ってほしいことや伝えたい想いはなんですか?

三宅(敬称略) ──

歴史を知ってもらい、日本文化を感じてもらいたいなと思います。

建物自体はとても古いです。もっとも古いところだと190年くらい前に建てられています。

そして3,000坪という広大な敷地と巨大な建物が今でも残っています。

全国的に見てもこれだけ大きな建物が同じ場所に残されているのはかなり珍しい事です。

だから、古いものが残されているところを大事にしてほしいなと思うし、立派なものをなるべく多くの人に見てもらいたいです。

昔からの建造物を守るために

──旧野﨑家住宅を修復したことはありますか?

三宅──

修復はもちろんします。

みなさんの家も建てて終わり、ということはないでしょうから。

大変な自然環境のなかで、建物はじっと立っているものなのでやっぱり傷みはさけられません。

昔の日本の家屋は自然の素材でできていて、時間が経過すればするほどどんどん劣化していくものなので、いろいろな箇所の修繕を行なっています。

なるべく同じ素材で修復したいので、使われている材料がまだ使えるなら再利用しますが、使えない時も同じ材料を用意するようにしています。

そういえば、ちょうど今(取材時)も、お茶室関係の場所を工事しているんですよ。

傷みがひどかったので、今回は解体修理までいくことになりました。

すべてバラすのですが、一度にバラすのではなくパズルのような感じで部分部分で解体していき、また組み立てるという方法で修復します。

修復は傷みが見つかれば、その都度直しています。

学芸員がおすすめする旧野﨑家住宅の見どころ

──特に見てほしいと思うおすすめスポットはありますか?

三宅──

全体的に見てほしいですが、表書院やその奥の暗い庭、42メートルの9部屋が連なる中座敷、歴史資料館などがおすすめです。

あと、空爆などから避難するための防空壕がありましたよね?

戦争中に防空壕を作っていたのですが、結局のところ爆弾が落ちてこなかったので途中で穴を掘るのは中止になったそうです。

なので、実際には防空壕としては使われておらず、穴はとても浅くなっています。

──だから、あの防空壕はあんなに浅かったんですね!納得しました。

三宅──

この話を知らずに防空壕を見られるかたは多いのだと思いますが、みなさんも感じられたように「こんなに浅い防空壕でどうやって身を守るのか」と不思議に思うかたがほとんどだと思います。

他にも、カメのような岩などがあったかと思いますが、「なぜこうなっているのだろう?」と歴史的背景を考えていろいろな場所を見てみるのがいいんじゃないかと思います。

児島に訪れた際には、ぜひ旧野﨑家住宅に!

現代的な建造物とは違い、物静かで堂々とそびえ立つ旧野﨑家住宅を見ると感動を覚えるかもしれません。

写真で見るよりも実際に見てみたほうがより大きく、より美しく感じることができ、心が自然と安らぎました

旧野﨑家住宅の魅力は、紹介したものだけにはとどまらず、まだまだたくさんあります。

自分自身の目で確かめて、私たちとは違った部分に魅力を感じるところもきっとあるでしょう。

旧野﨑家住宅は「児島ジーンズストリート」に位置しているため、児島のジーンズと合わせて立ち寄ってみてはいかがですか?

もちろん地元に住んでいるかたも、私たちの近くにはこんな場所もあったんだと思って気軽に行ってみるのもいいと思います。

児島の名所であり、岡山の名所である旧野﨑家住宅へぜひ足を運びに来てください!

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