信濃川下流域の市町村長や土地改良区理事長が国交相へ大河津分水路(新潟県燕市、長岡市)の抜本的改修促進を要望

国土交通省北陸地方整備局の岡村次郎局長へ要望書を手渡す、大河津分水改修促進期成同盟会会長の中原八一新潟市長(写真右)

新潟市の中原八一市長を会長とし、信濃川下流域の市町村長と土地改良区理事長で構成される大河津分水改修促進期成同盟会は25日、国土交通省北陸地方整備局へ、大河津分水路(新潟県燕市、長岡市)の洪水処理能力向上のための改修事業の推進や、その際に発生する採掘土砂の有効活用を要望した。

新潟県燕市と長岡市を横断し日本海と信濃川を繋ぐ大河津分水路は、長岡市から新潟市に渡る広大な信濃川下流域の治水の要として機能し、2022年には通水100周年を迎える。その一方で、施設の老朽化や激甚化が危惧される水害への処理能力不足が課題として上がっており、現在も大規模な改修が進められている。

大河津分水路「令和の大改修」(北陸地方整備局配布の資料より)

近年は台風や大雨などによる災害の激甚化が問題視されているが、2019年の東日本台風時には大河津分水路でも約10時間に渡り計画水位を超過するなどの事態が発生しており、洪水処理能力の不足が指摘されている。

また老朽化も深刻になっており、完成から80年以上が経過している第二床固は水叩き部のひび割れが悪化。さらに、同床固周辺部の河床は軟岩であることから侵食が進み、河床洗掘による周辺の地滑りの誘発、河道閉塞による越水被害、直下流にある「野積橋」の倒壊などの恐れがあるという。

大河津分水路全景(北陸地方整備局配布の資料より)

こうした課題から、現在北陸地方整備局では山地部の掘削による川幅の拡幅と第二床固の改築、野積橋の架け替えを行っている。第二床固の整備は2018年度より開始され、これまでに床固本体の一部となる鋼殻ケーソン全9函の内1函目の設置が終了。現在2・3函目に着手している。また、新しい野積橋は現在から約200メートル海側となり、歩道も整備され日本海の眺望も可能になるようだ。

山地部の掘削の規模は約1,000万立方メートル(東京ドーム約8杯分)。現在は約1割ほどが完了している。また掘削土は、右岸堤防の強化および、燕市分水西部地区の圃場整備事業などに有効利用される。

国土交通省北陸地方整備局の岡村次郎局長は「異常気象が危惧される中、予想される雨の量を1.1倍にしていかなくてはいけないと言われている。つまり、我々の治水の実力は年々下がっていっているということで、気を引き締めて事業を進めている。(現在国では)『防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策』として15兆円の予算が組まれ、北陸地方整備局も当初予算は、昨年度の「強靭化」の予算を含めた実質的な比較をしても1.22倍となっており、これらをしっかりと現地で執行し、大河津分水を含めた下流域を改修していきたい」と話した。

大河津分水改修促進期成同盟会と国土交通省北陸地方整備局の岡村次郎局長(写真中央)

【関連記事】

新潟県燕市で通水100周年を迎える「大河津分水」をテーマにしたスイーツを開発(2021年4月7日)

© にいがた経済新聞