京アニ事件、見通し立たぬ初公判の日 逮捕から1年、青葉被告の勾留続く

青葉真司被告(2019年7月、京都府宇治市内)

 2019年7月に京都アニメーション第1スタジオ(京都市伏見区)が放火され、36人が死亡、32人が重軽傷を負った事件は27日、青葉真司被告(43)が殺人容疑などで京都府警に逮捕されてから1年を迎える。裁判員裁判に向けて検察や弁護側などは非公開の協議を進めている模様だが、争点を事前に絞り込む公判前整理手続きの第1回期日は決まっておらず、初公判の時期は見通せない。

 青葉被告は現在、大阪拘置所に勾留されている。事件で全身に大やけどを負い、当初は命も危ぶまれたが、被告自身の皮膚を培養してつくった人工の皮膚を移植する手術を繰り返し、一命をとりとめた。大阪拘置所には専属の医師がおり、入院設備に準じた「医務部」と呼ばれる居室があるなど医療設備が整っていることから、勾留先に選ばれた。

 地検は昨年12月16日、半年間の鑑定留置を踏まえて「刑事責任能力を問える」として、青葉被告を起訴した。京都地裁は翌日に公判前手続きを行う決定をしたが、5カ月余りが過ぎても期日は入っていない。

 ただ、関係者は「手続きが止まっているわけではない」と明かす。刑事訴訟規則は地裁、地検、弁護人が訴訟進行の「打ち合わせ」を随時行うことができると定める。現在、三者は水面下で非公開の協議を続けているとみられる。

 「公判前整理手続の実務」の著者で元東京高裁部総括判事の山崎学さん(72)は「重大事件では打ち合わせを重ね、第1回期日を指定するのが一般的。今は検察と弁護側の主張を付き合わせ、証拠開示に向けたやりとりをしているのだろう」と推し量る。

 京アニ事件は平成以降の殺人事件として最悪の犠牲者数で、山崎さんは「現場の状況を含めて証拠量は膨大なはず。さらに刑事責任能力という判断の難しい争点があれば、時間がかかるのは理解できる」と話す。

 最高裁によると、公判前手続きに要する平均期間は7.4カ月だが、被害者が多い重大事件では2年を超えるケースもある。京アニ事件では弁護側が再度の精神鑑定を地裁に請求する可能性があり、初公判までの手続きはさらに長期化しそうだ。

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