私立高の挑戦<上> 創成館の覚悟 アスリートコース新設、週3回の専門授業

1期生にアスリートコースの概要を説明する主任の久留=創成館高体育館

 九州では福岡県に次いで2番目に私立高校が多い長崎県(22校、通信制を除く)。少子化や中学生の県外流出もあり、各校は特色を打ち出しながら、生徒数確保やブランド向上に努めている。スポーツの分野でも都市部に負けない実力や人材の育成を進めようと、新たに専門コースを設けた私立校も相次ぐ。特に大きな動きを見せる学校に焦点を当て、現状や展望を探った。
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 「われわれ指導者は本気で設立した。君たちにも本気になってもらわないといけない」
 4月16日、諫早市の創成館高体育館。本年度、普通科に新設したアスリートコースで主任を務める久留貴昭(38)は、同コースに入学してきた1年生約90人を前に語気を強めた。
 同校は2013年春、甲子園初出場した硬式野球部の改革で知名度を上げた。その後も米メーカー、アンダーアーマーと包括的パートナーシップ契約を結ぶなど、理事長兼校長の奥田修史(49)の下、柔軟かつ斬新な発想を実行。スポーツ以外への波及効果もあり、定員増を経て、約10年前までの経営難から再起した。今では生徒の9割超が第1志望の入学者だ。

学業が大切
 アスリートコースの入学者は、硬式野球や昨冬の全国高校選手権に初出場したサッカー男子をはじめ、バレーボール女子、陸上、柔道女子の五つの強化指定部の生徒が対象。普通科の他コースと同じ授業を受け、週3回は午後から各競技などの「専門授業」に臨む。
 奥田はコース新設について「全国を見渡せば、将来、その競技を取ったら何も残らずにセカンドキャリアに苦しむ選手がたくさんいる。スポーツだけやっていればいいということに疑問を持っているからこそ、真の“スチューデントアスリート”を育てたいと思っている」と意義を強調する。
 主任の久留も1期生に最初にくぎを刺した。「学業の成績が悪ければ練習にも出られない。部活だけやっていればいいと思う人は絶対に試合には出ていない。足を引っ張るだけで、考える力がない」。全生徒へ支給されているタブレット端末をはじめ、校外でも情報通信技術(ICT)教育をフル活用する。

盛り上がり
 強化指定部の生徒が週半分の午後を専門授業に費やすという県内では珍しい取り組み。“スチューデントアスリート”と掲げた看板の成否が問われてくるのはこれからだが、サッカーのサガン鳥栖U-15を経て入学した池田隼人(15)は「覚悟を持ってきた。自分たち1期生が、次の人が入りたいと思う環境と土台をつくりたい」と気を引き締め、前を向いている。
 生徒には県外出身者もいる。ただ、県全体が人口減を叫び、対策に向けて予算や人員を投入する時代。奥田は言う。「県外出身の生徒の何が悪いのか。みんな半端な気持ちで来ない」。その上でこう続ける。「私学には私学で勝たなきゃいけない理由がある。学校に部活は必要。そこで生まれてくる盛り上がりは、すごいものがある」

 


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