私立高の挑戦<下> 公立との「連携」不可欠 少子化対応が最大の課題

県内の高体連加盟数の推移

 九州では福岡県に次いで2番目に私立高校が多い長崎県(22校、通信制を除く)。少子化や中学生の県外流出もあり、各校は特色を打ち出しながら、生徒数確保やブランド向上に努めている。スポーツの分野でも都市部に負けない実力や人材の育成を進めようと、新たに専門コースを設けた私立校も相次ぐ。特に大きな動きを見せる学校に焦点を当て、現状や展望を探った。
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 県学事振興課によると、通信制を除く県内の私立高22校にアスリートや体育、スポーツと銘打つ「コース」「系列」があるのは、創成館、瓊浦、長崎総合科学大付、島原中央、海星の5校。ほかにも運動部活動で存在感を示している学校は多く、校内の活性化に加え、県の競技力向上という点でも影響力を持っている。
 2019年の県高総体(20年はコロナ禍で中止)。男女計55の団体・総合(参加1校の競技を除く)のうち、私立は延べ21校が優勝旗を手にした。対して県内に66校(県高体連加盟)ある公立は34校が優勝。全体的にどちらかが優勢という偏りはなく、競技ごとにバランスを保ちながら“共存”している。
 県や県スポーツ協会の理解、支援もあり、レベルも低くはない。19年の茨城国体。高校生が原動力となった長崎県は天皇杯(男女総合)26位という上々の結果を残した。

□競技人口減
 今後の課題はこの状態を維持、発展させていけるかどうか。競技力は少しでも気を緩めると、一気に下降線をたどる。長崎県は何度もその失敗を繰り返してきた。
 最大の問題点は少子化による競技人口減。長崎ゆめ総体(インターハイ)が開催された03年度と20年度を比べると、県内の高校生人口は約5万3千人から3万5千人に減った。これに伴い県高体連加盟数も全競技を合わせて学校数で男女延べ224校、4910人減少。サッカー、カヌーなど増加した8競技を除き、校数、人数ともに微減から半減した競技が多数を占める。
 ただ、競技人口減少は全国的な傾向で、そのまま競技力の低下に結びつくわけではない。03年以降も各種大会で「県勢初」の好成績は生まれ、14年の長崎国体を契機に飛躍した競技もある。その背景にはジュニア世代から高校の指導者たちの地道な努力があり、県の優秀な公立教職員の適正配置を含めて「この競技といえば、この学校」という“伝統”が、一定、守られてきている。
 このような経緯を踏まえると、部活動は誰もがスポーツに親しめると同時に、地域の活性化、発展にも寄与してきていることが分かる。教職員の働き方改革などが叫ばれ、近年はその在り方自体も問われているが、もたらしてきた効果は間違いなく大きい。

□次へつなぐ
 だからこそ、長崎県のような地方に不可欠となるのが、私立と公立の共存共栄。例えば、私立のある部活動が、県内の中学生をごっそり持っていった場合、他校はチームを組むのさえ困難になる可能性もある。逆に大所帯で一度も公式戦に出られないまま終わるケースもある。各競技、地域の実情を把握して、県全体がどれだけ連携していけるか。選手第一で考えれば、おのずと答えは導きだされる問題だ。
 ある強豪私立の指導者は、県内の有望な中学生の勧誘について持論がある。「その地域で熱心に活動する公立の指導者とも連絡を取り、まずはその意向などを聞いて動く」。別の競技でも「希望者以外は基本的に県内出身者を自ら誘うことはない。私立が軒並み選手を獲得すれば公立の首を絞め、参加校数もさらに減る」という方針を持つ指導者もいる。
 たかが部活、されど部活-。コロナ禍の今だからこそ、スポーツ界はその重みや力を再確認して、次世代へつないでいく努力が求められる。

 


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