迫りくる「2025年の壁」、DXや行政のデジタル化を追い風にするITサービス企業10社

3月決算企業の決算発表が一巡し、株式市場では2022年3月期(2021年度)に成長する分野や業績の良さそうな企業に注目が集まっています。そこで今回は、新たな拡大局面を迎えるソフトウェア投資と注目したいITサービス企業を紹介します。


ニューノーマル社会に対応するソフトウェア投資が増加

4月に発表された日銀短観の3月調査では2021年度の全産業ベース(有効回答8,120社を対象)のソフトウェア投資の計画値は前年度比6%増の4.3兆円となり、今年度は2年振りにソフトウェア投資が拡大する見通しにあります。

今年度にソフトウェア投資が増える理由で大切なところは、ニューノーマルと呼ばれる新常態など、産業社会の構造的な変化に対応するためにソフトウェア投資の必要性が高まっていることです。

自宅のインターネットで買い物をする「巣ごもり消費」という新しい消費の形や、在宅で仕事を行うテレワークという新しい働き方が定着するニューノーマル社会に対応するために、従来は(イーコマースでない)リアルの店で商売をしていた企業がイーコマースを行うようになり、テレワークではクラウドで仕事をするようになりました。オンライン医療、オンライン教育、キャッシュレス決済などの新たなビジネスも広がり始めており、それらに必要なのがソフトウェア投資なのです。

デジタルトランスフォーメーション(DX)で「2025年の崖」を回避へ

経済産業省は2018年に発表した「DXレポート」で「2025年の崖」と称し、複雑化・老朽化したITシステムを使い続けると、2025年を節目にIT人材の不足やサポートの終了などの問題が発生するリスクが高まり、最大で年間12兆円の経済損失が生じる可能性を指摘しました。

経済損失を防ぐためには、老朽化したシステムの刷新や、新たなデジタル技術を活用した新しいビジネスモデルを生み出すことが求められています。「2025年の崖」を回避するためにも、クラウド、IoT、人工知能(AI)、自動運転、ロボットなどの新たなデジタル技術を活用して、業務の効率化やデジタル化、ビジネスモデルの変革や企業の成長につなげるデジタルトランスフォーメーション(DX)に向けたソフトウェア投資の拡大が期待出来そうです。

行政のデジタル化や5G基地局整備も追い風

今年の秋にデジタル庁が設立されることもソフトウェア投資を増やすことになるでしょう。菅政権の目玉の政策であるデジタル庁の設立では、住民票などの証明書や給付金の申請など、現在は紙とハンコを使う行政サービスのデジタル化や行政機関の情報システム刷新などが行われる見通しです。これに加えて、NTTドコモなどの携帯キャリアが5G(モバイルの第5世代通信規格)基地局の整備を行う予定にしていることもソフトウェア投資に追い風になりそうです。

ソフトウェア投資の拡大を追い風にするITサービス企業に注目

ソフトウェア投資に関わる企業では、官公庁・自治体向けシステムに強みを持つ富士通(6702・東証1部)やNTTデータ(9613・東証1部)、5G基地局のネットワーク構築が期待されるNEC(6701・東証1部)や伊藤忠テクノソリューションズ(4739・東証1部)、DXのコンサルティングやシステムに強い野村総合研究所(4307・東証1部)、クラウドサービスが好調なオービック(4684・東証1部)、オンライン医療に強みをもつメドレー(4480・東証マザーズ)、オンライン学習を展開するすららネット(3998・東証マザーズ)、電子契約サービスの弁護士ドットコム(6027・東証マザーズ)、キャッシュレス決済サービスを展開するGMOフィナンシャルゲート(4051・東証マザーズ)等に注目しています。

<文:投資調査部 川崎朝映>

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