<社説>緊急事態宣言延長 国は躊躇せず予算投入を

 新型コロナウイルス感染拡大に伴い10都道府県に発令されていた緊急事態宣言は20日で、沖縄県を除く9都道府県で解除された。一方で、人口10万人当たりの新規感染者数の全国ワーストが続く沖縄県は21日から7月11日まで、3週間の宣言延長期間に入ることとなった。 県内は学校の休校措置は明けるが、酒類提供店や飲食店には引き続き休業・時短営業が求められる。県をまたぐ往来の自粛も継続し、基幹産業の観光事業者は厳しさが続く。ここを乗り切るには、事業者や家計を支援する思い切った財政出動が必要だ。

 県民が払ってきた努力を無にしないため、搭乗前PCR検査や陰性証明の義務化といった、ウイルスの移入を水際で食い止める感染防止策の徹底も急がれる。政府は約30兆円を前年度から繰り越しており、財源は十分にある。安全安心の確立のため、躊躇(ちゅうちょ)なく予算を投じることだ。

 4月にまん延防止等重点措置に入って以来、飲食店の時短要請が長く続いている。時短要請に応じずに営業を続ける店舗もあり、事業者の間に不公平感も生じている。

 営業の自由は過度に制約されるべきではない。一方で、高齢者などリスクの高い人への感染を防ぎ、救える命をきちんと救うという公共の福祉の観点から、コロナ対策に穴があってもいけない。医療体制が逼迫(ひっぱく)して必要な医療が受けられなくなる事態を避けるために、県民一致した取り組みが今しばらく必要だ。

 取り組みへの協力を得るには、コロナ対策で打撃を受ける人たちへの補償や支援を十分に行うことだ。国は感染者の多い地域に対し、地方創生臨時交付金の増額や雇用調整助成金特例措置の延長を講じるなど、必要な財源をしっかりと担保してもらいたい。

 観光最盛期の夏場を前に、7月11日の期限までに宣言を終えたいというのが業界の強い意向だ。観光客を安心して迎えるために、ゴールデンウイークの人流増加が感染拡大を招いた事態の再来は絶対に防がなければならない。

 専門家でつくる新型コロナ対策分科会は、沖縄や離島に出発する前のPCR検査を航空会社が乗客に勧めるよう提起している。政府が東京五輪参加者への検査や外部との接触制限など対策を徹底して開催すると言うならば、国内の移動にも同様の対策を導入すれば感染は抑えられる。

 感染防止対策と合わせ、ワクチン接種を加速させることが重要だ。県内の65歳以上の高齢者で1回目のワクチン接種を終えた割合(19日時点)は37.78%で、全国平均の44.33%を下回っている。

 警察官や保育士、教員など、感染リスクにさらされながら社会基盤を支えているエッセンシャルワーカーへの接種も優先度が高い。広域接種会場の設置や職域接種の推進により、接種完了時期を早める取り組みが求められる。

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