澤村拓一のような“救世主”になる? ロッテ“積極トレード”の狙いとは…

ロッテ・加藤匠馬【画像:パーソル パ・リーグTV】

DeNAから国吉、中日から加藤を交換トレードで獲得

巻き返しに向けた2つのトレードはチームの課題を解決するためのラストピースとなるだろうか。ロッテが14日に有吉優樹投手とDeNA・国吉佑樹投手、15日に加藤翔平外野手と中日・加藤匠馬捕手と、交流戦終了直後に相次いで2つのトレードを成立させた。どちらも交換相手がセ・リーグの選手とあって、普段パ・リーグの試合を中心に見ているファンにとっては、ややなじみが薄いかもしれない。

シーズン途中のトレードは、これまでの戦いぶりを通じて浮かび上がってきたチームの弱点や、課題を解決することが目的となる。では、今回のトレードによって解決が期待される、現在のチームが抱えた課題とはいったいどのようなものだろうか。

今回の記事では、新たにロッテの一員となった2選手の経歴や特徴について紹介するとともに、加入によって期待されるプラス要素や、球団が獲得に踏み切った理由として考えられるものについて紹介していきたい。

まず、国吉がこれまでに記録した年度別成績について見ていこう。

国吉佑樹の年度別成績【画像:(C)パ・リーグ インサイト】

国吉は秀岳館高から2009年育成選手ドラフト1位で横浜(現DeNA)に入団。2012年には先発としてキャリア最多の112回2/3を投げる活躍を見せ、2014年以降はリリーフを主戦場として登板を重ねた。2016年以降はやや登板出場機会を減らしていたが、カットボールを投球の軸の一つに据え始めてからは課題の制球に一定の改善が見られ、再び1軍戦力として重用されるようになっていった。

最速161キロを誇る国吉はDeNAブルペンの貴重なピースだった

最大の武器は快速球で、2019年には161キロを記録。また、2019年以降の3シーズンはいずれも投球回を上回る奪三振を記録しており、パワーピッチャーならではの高い奪三振率も特徴の一つだ。加えて、今季DeNAでは18試合で29回2/3を投げているように、ロングリリーフをこなせる。こうした利便性の高さも持ち味と言えるだろう。

剛速球を武器にセ・リーグで活躍した右腕ということで、ロッテファンの中には澤村拓一投手(現レッドソックス)を連想する方も少なくないだろう。抜群の切れ味を誇った澤村のスプリットのような絶対的な決め球はないものの、球速に関しては国吉が上回るだけに、パ・リーグの野球に適応できれば、現在はメジャーリーグで活躍している剛腕の後釜となるポテンシャルはあるはずだ。

ロッテの救援陣は田中靖洋投手、フランク・ハーマン投手、唐川侑己投手といった面々の故障や不調に加え、昨季活躍した小野郁投手と東條大樹投手もやや安定感を欠いている。佐々木千隼投手と大嶺祐太投手がリリーフとして復活し、故障者の復帰も見込めるものの、ブルペンの層拡充は急務な状況だった。本格派が多いリリーフ陣の中でも異彩を放つ剛速球を持つ国吉の獲得は理に適ったものと考えられる。

加藤匠馬は球界屈指の強肩、2019年に92試合出場

続けて、加藤匠馬捕手の年度別成績も見ていきたい。

加藤匠馬の年度別成績【画像:(C)パ・リーグ インサイト】

加藤は三重高、青山学院大を経て2014年ドラフト5位で中日入団。プロ入りから4年間は出場機会に恵まれなかったが、5年目の2019年には1軍で92試合に出場、強肩を武器に活躍した。正捕手不在の状況の中で一歩抜け出したかに思われたが、2020年には同じく強肩の持ち主で、高い盗塁阻止率を誇る木下の台頭と自身の打撃不振が重なって出場機会が減少、今季は1軍での出場機会がなかった。

加藤の持ち味といえば、なんと言っても「加藤バズーカ」の異名を取る球界屈指の強肩だろう。今季のロッテは正捕手である田村龍弘捕手の離脱後、柿沼友哉捕手が4月9日の西武戦で1試合5盗塁を許した。

佐藤都志也捕手はスローイングが課題で、送球が逸れるケースが少なくない。そういった事情を鑑みても、加藤の獲得は盗塁阻止率向上への切り札となるかもしれない。

強肩というニーズを抜きにしても、昨季、今季と2年連続で田村の離脱後にチームがやや苦しんだという事情もあって、捕手の選手層を厚くすることも必要だった。現状の捕手陣にはない明確な武器を持つ加藤の加入は、有事におけるチームの戦力ダウンを最小限にとどめるという意味でも、大きな価値を持つ可能性はありそうだ。

元中日左腕エンニー・ロメロ投手も獲得した

近年のロッテでは、シーズン途中のトレードをきっかけに活躍する選手も存在している。澤村は巨人では不振で3軍も経験するほどだったが、昨季途中のトレードを機に復活。8回を任されるセットアッパーとして活躍し、22試合で13ホールド1セーブ、防御率1.71と安定感抜群の投球を披露した。その活躍はMLBからも高い評価を受け、現在はレッドソックスで中継ぎの一角として活躍している。

岡大海外野手も2018年途中に日本ハムからトレードで加入して以降、バイプレーヤーとして1軍に定着。俊足を生かした走塁や守備だけでなく、4月21日にチーム20年ぶりの逆転サヨナラ本塁打を記録したように、速球に強くパンチ力のある打撃でもたびたびインパクトを残している。現在は和田康士朗外野手に次ぐ代走の2番手、対左投手のスタメンや代打、外野と一塁の守備固めといった、幅広い器用に応える貴重な戦力となっている。

投手と捕手に離脱者が相次いだこともあり、6月22日には借金生活に突入した。課題解決への目的意識を感じる今回のトレードが、期待通りの効果をもたらせば、ブルペンに厚みが増し、相手の機動力への抑止力が生まれることだろう。

6月16日にはかつて中日でプレーした助っ人左腕、エンニー・ロメロ投手の入団も決定し、3日連続で補強を行う積極的な動きを見せた。12球団トップの300得点超を記録している打撃力は申し分ないが、チーム防御率はリーグ最下位の4.01(22日現在)。明確な課題となっているディフェンス面が改善すれば、上昇気流に乗る可能性は大いにあるはずだ。

チームに新風を吹き込んで2位を確保する要因にもなった、澤村を獲得した昨季のトレードのように今回の補強もチームにとって“大当たり”となるだろうか。期待を背負ってマリーンズのユニホームに袖を通す2選手が、2005年以来となるリーグ優勝を狙うチームにとって救世主となるような活躍を見せてくれることに期待したい。(「パ・リーグ インサイト」望月遼太)

(記事提供:パ・リーグ インサイト)

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