【改正薬機法】薬局管理者には「5年勤務経験」を推奨か/近くガイドラインを発出

【2021.06.24配信】令和元年に成立した改正薬機法は、項目ごとに施行期日が分かれている。そのうち、8月1日の施行が「認定薬局」と「法令遵守体制の整備」だ。施行の8月1日を控えて、業界関係者の準備も慌ただしくなってきた。法令遵守体制に関してはガイドラインが発出される見込みだが、日本チェーンドラッグストア協会では、6月に開いた「ドラッグストア業界 研究レポート報告会」で、このガイドラインの方向性を解説するとともに、業界の信頼を損ねることがないよう、襟を正した対応の徹底を確認していた。ガイドラインは6月末ごろに発出される見込み。

管理者にふさわしい能力と経験を持っていることを客観的に示せるような人材選任が求めらる

改正薬機法では、薬局等における法令遵守体制の整備を求めている。

薬局等において法令遵守における責任者を明確にするため、責任役員を法律上で位置づけ、許可申請書に記載する。これまでは、「業務を行う役員」が欠格事由に該当しないこと等について、許可申請書に記載することを求めていただけだった。

一方、薬局開設者等に対し、「従業者へ法令遵守のための指針を示すこと」や「法令遵守のための体制」を求める。
「法令遵守のための体制」は、法令遵守上の問題点を把握し解決のための措置を行うことができる体制を含めたもの。これらに対して、行政は改善命令が出せる。

併せて、「必要な能力及び経験を有する管理者を選任する」ことや「管理者により述べられた意見を尊重し、法令遵守のために措置を講じる必要があるときは、当該措置を講じること」も求める。

今年1月には、関連する通知を発出し、「薬局開設者」「医薬品の販売業者」について、「管理者等が行う業務」と「遵守すべき事項」のそれぞれに関して以下の通り規定していた。

■管理者等が行う業務
薬局の管理者、店舗管理者、区域管理者及び医薬品営業所管理者が行う業務
・医薬品の試験検査及び試験検査の結果の確認(区域管理者を除く。)
・薬局、店舗、区域又は営業所の管理に関する事項を記録するための帳簿の記載
・特定生物由来製品に関する記録の保存(薬局の管理者に限る。)
・法令遵守体制の整備の一環として明確化された上記管理者が有する権限に係る業務

■管理者等が遵守すべき事項
・従業者の監督、医薬品その他の物品等の管理、その他業務につき、必要な注意をすること。
・上記管理者が薬局開設者又は医薬品の販売業者に対して述べる意見を記載した書面の写しを3年間保存すること。

さらに、許可等業者が措置すべき事項を以下のように規定していた。

■①薬局開設者又は医薬品の販売業者が明らかにすべき管理者の権限
・薬局、店舗又は営業所(以下「薬局等」という。)に勤務する薬剤師、登録販売者その他の従業者(配置販売業においては区域内において配置販売に従事する配置員その他の従事者)に対する業務の指示及び監督に関する権限
・上記のほか、薬局等(配置販売業においては区域。以下同じ。)の管理に関する権限

■②薬局開設者又は医薬品の販売業者の業務の適正を確保するために必要なものとして整備すべき体制
・薬局開設者又は医薬品の販売業者の業務の遂行が法令に適合することを確保するために必要な規程の作成を行う体制
・薬局開設者又は医薬品の販売業者の薬事に関する業務に責任を有する役員及び従業者に対する教育訓練の実施及び評価を行う体制
・薬局開設者又は医薬品の販売業者の業務の遂行に係る記録の作成、管理及び保存を行う体制
・薬局開設者又は医薬品の販売業者が薬事に関する業務に責任を有する役員及び従業者の業務を監督するために必要な情報を収集し、その業務の適正を確保するために必要な措置を講ずる体制
・上記のほか、薬局開設者又は医薬品の販売業者の業務の適正を確保するために必要な人員の確保及び配置その他の薬局開設者又は医薬品の販売業者の業務の適正を確保するための体制

■③上記①及び②のほかに薬局開設者又は医薬品の販売業者の業務の適正な遂行に必要なものとして定める措置
・薬局開設者又は医薬品の販売業者の従業者に対して法令遵守のための指針を示すこと。
・薬事に関する業務に責任を有する役員の権限及び分掌する業務を明らかにすること。
・薬局開設者又は医薬品の販売業者が2以上の許可を受けている場合にあっては、当該許可を受けている全ての薬局等において法令遵守体制が確保されていることを確認するために必要な措置
・薬局開設者又は医薬品の販売業者が2以上の許可を受けている場合であって、2以上の薬局等の法令遵守体制を確保するために薬局開設者又は医薬品の販売業者を補佐する者を置くときは、次に掲げる措置
(1)薬局開設者又は医薬品の販売業者を補佐する者が行う業務を明らかにすること。
(2)薬局開設者又は医薬品の販売業者を補佐する者が2以上の薬局等の法令遵守体制を確保するために薬局等の管理者から必要な情報を収集し、当該情報を薬局開設者又は医薬品の販売業者に速や
かに報告するとともに、当該薬局開設者又は医薬品の販売業者からの指示を受けて、薬局等の管理者に対して当該指示を伝達するための措置。
(3)薬局開設者又は医薬品の販売業者が2以上の薬局等の法令遵守体制を確保するために薬局開設者又は医薬品の販売業者を補佐する者から必要な情報を収集し、薬局開設者又は医薬品の販売業者
を補佐する者に対して必要な指示を行うための措置。
・医薬品の保管、販売、その他医薬品の管理に関する業務が適切に行われ、かつ、薬局開設者又は医薬品の販売業者の義務が履行されるために必要な措置
・上記のほか、上記②に規定する体制を実効的に機能させるために必要な措置

これらの通知内容をさらに詳細に整理したガイドラインを国は発出する予定で、ガイドラインの方向性に関して、日本チェーンドラッグストア協会では「(管理者の選任要件に関して)5年の薬局勤務経験と認定薬剤師の取得が推奨される見込み」と説明。

さらに、「あくまで推奨されているだけで、開設者の良識に委ねる格好になっている」と説明した。「管理者にふさわしい能力と経験を持っていることを客観的に示せるような人材選任が求めらる」と話した。

一方、「責任役員」に関しては、法令遵守に必要な関連業務を管掌する全ての役員が該当するとした。
株式会社の場合は、代表取締役全員と薬事法令業務を分掌する取締役全員となるとした。

また、偽ハーボニー事件で光が当たることになった「エリアマネージャー」の存在については、複数の薬局やドラッグストアを経営する企業で、エリアマネージャーを置いている場合は、エリアマネージャーの責任の役割と業務範囲、またその業務は開設者の権限の下に行使される旨の文書化が求められることになるという。

日本チェーンドラッグストア協会では、「法令違反の責任をエリアマネージャーや末端の職員に押し付けることは不可能になる。上司である責任役員の監督責任と開設者の責任が明確化されることになる」として、「業界の信頼を損ねることがないよう、襟を正した対応が求められる」としていた。

なお、ガイドラインは6月末ごろに発出の見込みというが、ガイドラインはあくまで考え方を整理したものであり、実際の実施においては、各企業において形式的にならず不断に検討し続けるべきものとされている。

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