巣ごと落ちたツバメのひな 喫茶店のマスターが救う 軒下から5羽巣立ち「これからもそっと」

巣立ったツバメ5羽のうち、最後まで巣に残っていた1羽=21日昼、横浜市金沢区富岡西2丁目

 横浜市金沢区で巣ごと地面に落ちたツバメのひなの巣立ちに、近くの喫茶店のマスターが一役買った。マスターは「店はツバメの駆け込み寺ですよ」と笑う。

 「大変だ」-。19日昼、慌てた様子の男性が同区富岡西2丁目の「カフェ・ノアール」に飛び込んできた。

 店を出たマスターの山路陽一さん(65)が目にしたのは地面で動き回る5羽のひなたち。見ると、近くのビルの壁につくられた巣が落下していた。

 ひながいるすぐ近くを車が走行していく。親鳥は「ピィピィ」と甲高い声で鳴きながら、せわしなくひなの周囲を飛び回っていた。

 「このままでは危ない」。鳥獣保護法で保護されている野鳥のため、関係団体に連絡した上で、山路さんはプラスチック製の容器を手に男性と協力してひなを収容。喫茶店の軒下にあった“空の巣”に移した。

 喫茶店の軒下には10年以上前からツバメがこしらえた二つの巣があり、今年もこの巣からひなの巣立ちを見送ったばかりだった。

 毎年、子育てをする時期には天敵のカラスを寄せ付けないよう巣近くの照明の電球を撤去。「子育ての時期は営業中でも真っ暗ですよ」と笑顔を見せる。

 20~21日に5羽とも無事巣立ち、「ほっとした」と山路さん。ただ、再び空っぽになった巣では、新たなつがいが修繕作業にいそしむ姿が確認されている。

 「これからもそっと見守っていきたい」。ツバメの「駆け込み寺」のマスターは優しいまなざしを巣に向けた。

© 株式会社神奈川新聞社