「夏の大三角」で有名な七夕の星はどんな星? 地球からの距離も動画で実感

【▲「夏の大三角」を形作る3つ星:左からアルタイル、デネブ、ベガ(Credit: Rogelio Bernal Andreo (Deep Sky Colors))】

冒頭の画像は「夏の大三角」を形作っている3つの星(左からアルタイル、デネブ、ベガ)のクローズアップ写真です。

ベガ(こと座α星)は実視等級0.03等、地球からの距離は約25光年、実際の明るさは太陽の約30倍で、アルタイル(わし座α星)は実視等級0.77等、地球からの距離は約17光年、実際の明るさは太陽の約10倍です。

デネブ(はくちょう座α星)は1.25等と3つの中では最も暗いのですが、実際の明るさは太陽の54000倍にもなります。しかし、地球からの距離が1400光年とベガ、アルタイルと比べて桁外れに遠いため、地球から見るとベガやアルタイルよりも暗く見えるのです。

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七夕の夜に「織姫(織女)」(ベガ)と「彦星(牽牛)」(アルタイル)が天の川を渡って出逢うという「七夕伝説」を知らない人はほとんどいないことでしょう。この七夕伝説は日本で生まれたものではなく、中国が起源だとされています。

こちらの画像は中国で撮影された「夏の大三角」と天の川です。中央の山の峰に向かって延びる城壁は「万里の長城」です。

【▲ 万里の長城の彼方に見える「夏の大三角」と天の川(Credit: Steed Yu & NightChina.net)】

デネブは天の川の中で輝いていますが、ベガとアルタイルは天の川をはさんで向かい合っている様子がよくわかります。向かい合って見えるとはいえ、実際にはベガとアルタイルは約14光年ほど離れています

だから、織姫と彦星は一夜で出逢えるはずがないという、ある意味、伝説の夢を壊すような天文学的説明はよく見聞きすることでしょう(もちろん、その説明自体に教育的な意義はあります)。

しかし、天文学的な説明をされても、ベガとアルタイル、そして地球(太陽系)からの距離を実感するのはむずかしいことです。

こちらの動画は「国立天文台4次元デジタル宇宙プロジェクト」による太陽系を中心とした天の川銀河の中でのベガとアルタイルの位置を示したものです。

天の川銀河のスケールからすると、ベガとアルタイルが太陽系から意外と近いことがわかります。最初はデネブも見えていますが、ベガとアルタイルにフォーカスしているため、途中から見えなくなってしまいます。

ベガは約12000年後に、地球の自転軸の歳差運動により、現在の北極星の位置に来て、北天の夜空では恒星がベガを中心として周ることになります。

こちらの画像は特殊な撮影方法を用いて、未来(西暦14000年)の北天の夜空の様子を表現したものです(撮影方法の詳細などはこちら(英語)を参照してください)。

【▲ 左:北極星を中心とした現在(2015年)の北天の夜空。右:特殊な撮影方法を用いて撮影されたベガを中心とした未来(西暦14000年)の北天の夜空(Credit: Miguel Claro | Dark Sky Alqueva)】

12000年後は人間にとっては遠い未来のように思えますが、天文学的な時間尺度では近未来と言えるでしょう。その頃には、織姫の周りを彦星が回り続けることになります。ひょっとすると、そんな夜空を眺めて新たな物語が創られるかもしれませんね。

Video Credit: 国立天文台4次元デジタル宇宙プロジェクト
Image Credit: Rogelio Bernal Andreo (Deep Sky Colors)、Steed Yu & NightChina.net、Miguel Claro | Dark Sky Alqueva
Source: 国立天文台、APOD (1) (2) (3) 、国立天文台4次元デジタル宇宙プロジェクト
文/吉田哲郎

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