松本隆 作詞活動50周年 時を越えて愛される松本作品の魅力 トリビュートアルバム「風街に連れてって!」もうすぐ発売!

松本隆・作詞活動50周年を記念して、音楽エンターテインメントサイト Re:minderでは、その活動の歩みを特集!7月14日に発売されるトリビュートアルバム『風街に連れてって!』のオリジナル楽曲にフォーカスした書き下ろし記事も掲載。

時代に流されず決して色褪せない “風街” 風景の源流

松本隆が高校時代、ポケットに忍ばせていた生徒手帳の住所欄に “風街” と記していたというエピソードが好きだ。

今年、作詞家生活50周年を迎える稀代のヒットメーカー松本隆。1970年にデビューした、はっぴいえんどのドラマーとして、そしてソングライティングに作詞家として名を連ねたことが氏のキャリアの起点とされるが、それよりずっと昔から “詩人” だったのだと思う。

作詞家、松本隆の評価は、多忙を極め膨大な作品を残した80年代から現在に至るまで多くの人の心に共感と新しい風を吹き込み、聴く者の心にはそれぞれの人生の舞台を反映させた十人十色の心象風景を描いている。時代に流されず、決して色褪せないその風景の源流は “風街” という松本の心の中で描かれた街を舞台に綴られている。

風街―― この言葉が独り歩きをはじめたのは、松本が在籍し、作詞を担当したロックバンド、はっぴいえんど通算2枚目のスタジオアルバム『風街ろまん』からだろうか。アルバムのリリースは1971年。東京オリンピック後の高度経済成長の最中だった。

アルバム全編を彩るリリックは、洒脱でありながら郷愁に満ち溢れていた。発展めざましい東京の街の中で、松本が青春時代を過ごした青山、渋谷、麻布界隈で見られた原風景。それは洒脱な色合いの中に同居する古き良き日本の風景だったのかもしれない。移ろいゆく季節の情感、忘れ去られそうな郷愁… そんなひとコマ、ひとコマを普遍的な言葉と東京に生まれ、この場所の風景を眺めてきた者にしか切り取ることの出来ない洗練された感性によって綴られていた。

“風街” というルーツを持ち、この場所を離れることなく作詞家として数多くのヒットを世に放った松本であるが、その作風を極めてアーバンな、時代の先端をいくイメージでとらえる者も多かったのも確かだ。しかし、そこに潜む普遍性、郷愁が織り成すマジックこそが松本隆の詞の世界の特長と言えるだろう。

松田聖子プロジェクトを初め、失敗が許されないビッグスターとの数々のコラボレート。大ヒットを生み出すその経緯の中に潜む緊張感の中においても、松本の紡ぐ世界は時代の一瞬、一瞬を切り取りながら、時にはどこか牧歌的な側面もあり、人々の心の奥底に潜むかなしみをなぞるような人間味溢れる一面も垣間見ることができた。

今年作詞家生活50周年そのアニバーサリーとして2021年7月14日にリリースされるトリビュートアルバム『風街に連れてって!』は、そんな詞の世界観をそのまま2021年現在に繋げるサウンドで、実力派から新進気鋭、時代の最前衛を行くアーティストたちが集結。極めてクオリティの高いオムニバスとしてリリースされた。

トリビュートアルバム「風街に連れてって!」2021年に響く松本隆が紡いだ言葉

6月23日に先行配信された川崎鷹也がカバーする「君は天然色」では、オリジナル以上のアップテンポで、雨雲の向こうに広がる果てしない青空のような壮大な印象を受ける。それだけではない、松本が詞の中に秘めたかなしみ… 妹を亡くしてしまった拭いきることの出来ない喪失感が、言葉を噛みしめるように歌う川崎の歌声に優しさとともに内包されていた。

また、楽曲プロデュースを担う亀田誠治は、オリジナル楽曲の時代性を損なわずに郷愁、洒脱さ、普遍性を加味した上で、松本の紡いだ言葉を、2021年の現在にどのように響かせるかを念頭において携わっていると思う。これがプロの成せる技だ。そしてここに2021年の「君は天然色」が完成した。

トリビュートアルバムの収録楽曲は1971年にリリースされた「風をあつめて」(はっぴいえんど)から1984年リリースの「風の谷のナウシカ」(安田成美)まで全11曲。70年代から80年代にかけて、時代が急速にアカデミックに変貌しつつある中、松本がどのような視点で時代を見つめ、自らを見つめてきたのか―― その心象風景を考察しながら楽曲を噛みしめてみるのも良いかもしれない。

リマインダーではこのトリビュートアルバム『風街に連れてって!』のリリースを記念して、ここに収録されている楽曲のオリジナルにスポットを当てながら、当時のオリジナル楽曲にちなんだ書き下し記事を連日掲載。作詞家松本隆の軌跡と、それぞれの楽曲に潜む洒脱さと郷愁が同居する “松本隆の世界観” をたっぷりと堪能して欲しい。

(文:本田隆)

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