CHIME望遠鏡、最初の1年で高速電波バーストを535件検出。非反復とリピーターの二分化が鮮明に

【▲ カナダに建設された「CHIME望遠鏡」(Credit: CHIME Collaboration)】

米国とカナダの国際研究チームは、カナダに建設された「CHIME望遠鏡」(Canadian Hydrogen Intensity Mapping Experiment telescope)が、運用開始からの1年間で「高速電波バースト」(FRB:Fast Radio Bursts)を500回以上検出したことを発表しました。

高速電波バーストとは非常に短い時間(数千分の1秒程度)で電波が放射される突発的な現象で、その発生源や放射のメカニズムは未だ解明されていません。高速電波バーストは全天で毎日数多く発生していると考えられていますが、どこで発生するか予測できないので、その現象を捉えるのは非常に困難なのです。

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しかし、CHIME望遠鏡の登場によって状況は大きく変わりました。CHIME望遠鏡は半円筒形の反射板4基から構成されていて、各反射板の焦点に256個のアンテナが設置されています。この形状によりCHIME望遠鏡は非常に広い視野を持ち、偶発的な電波現象を観測する能力が従来の電波望遠鏡に比べて格段に優れています。研究チームによると、CHIME望遠鏡は運用が始まった2018年から2019年までの1年間に535件の高速電波バーストを新たに検出しました。この結果をもとに、全天では毎日およそ800件の高速電波バーストが発生していると見積もられています。

CHIME望遠鏡の観測結果は最新の高速電波バーストのカタログとしてまとめられています。同カタログによると、観測された高速電波バーストのほとんどは単発のものでしたが、そのうち61件は18の発生源から繰り返し放射されていることが判明。同じ発生源から繰り返されているのであればバーストの源を明らかにできる可能性が高まり、発生する原因を解き明かす糸口になることが期待されます。

さらに、繰り返される高速電波バーストには単発のバーストと比べて継続時間がやや長いなどの違いがみられることから、研究チームでは単発の高速電波バーストと繰り返される高速電波バーストでは発生源や発生する原因が異なると推測しています。

研究チームによると、CHIMEが受信した高速電波バーストの多くは遠方の銀河から届いたものであり、莫大なエネルギーをもつ天体が発生源であることが考えられるといいます。より多くの高速電波バーストの検出を通して、これほど明るく高速な電波信号がどのような現象によって放射されているのかが特定されることに研究者は期待を寄せています。また、数多く検出される高速電波バーストを利用して、宇宙全体に存在するガスの分布図を作成することも計画されています。

Image Credit: CHIME Collaboration
Source: MIT
文/sorae編集部

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