防衛白書 武力行使「欠落?部分」補う赤旗記事

 2021年版防衛白書から憲法9条(戦争の放棄規定)の下で求められる『武力行使』(自衛措置)の要件に関して、安倍政権下で憲法解釈変更により集団的自衛権行使の一部容認となった経緯や解釈変更前と変更後の比較(変更点がわかる説明)記載がなくなり、現行解釈のみの掲載になった。現行の安保法制のうち、集団的自衛権の行使容認部分は「違憲」にあたるとして法改正が必要との主張は野党はじめ学者らからもでており、安倍政権が行った解釈変更に対しては今も世論が分かれている。

 こうした中、日本共産党は機関紙赤旗7月14日の電子版で、この問題を取り上げた。「武力行使、旧見解を削除 安倍前政権『閣議決定』のみ記述」としたこの記事は、客観性が高く、防衛白書の解説コラムに付してもよい内容と思われるため、その内容を紹介する。

 「政府は、憲法9条は武力行使を禁じているものの、『わが国に対する急迫不正の侵害』が発生した場合などの要件(武力行使の3要件)を満たせば武力行使が可能との見解をとっていました。しかし、安倍前政権が2014年、この憲法解釈を閣議決定で全面変更。『わが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、わが国の存立が脅かされる』などの『武力行使の新3要件』を打ち出しました。これにより、海外での米国などの戦争に参戦する集団的自衛権の行使に道を開きました」と経過紹介。

 そのうえで「白書はこれまで、解釈変更前と変更後の武力行使の要件について、変更点が分かるように併記していましたが、21年版は旧3要件を削除し、存在しなかったかのような記載となりました。安倍政権の憲法解釈変更をめぐっては、多くの憲法学者や司法関係者が違憲と主張。こうした解釈の上に成り立つ安保法制に対する違憲訴訟が全国各地でおこっています」というもの。憲法9条と武力行使・集団的自衛権の行使を理解するうえで、現況を簡潔に説明しており、白書を補う内容になっている、といえよう。(編集担当:森高龍二)

© 株式会社エコノミックニュース