店継続へ娘奮闘 変わらぬ味、製法受け継ぐ 上越市稲田2井上冷菓 新装開店

 昔ながらの原材料と手作りの製法で、アイスキャンディーを販売する上越市稲田2の井上冷菓。今秋、閉店の予定だったが、店主の娘が営業の存続を決意。このほど店頭のリニューアル工事を終え新装開店した。

リニューアル工事を終えた井上冷菓の店頭。のぼり旗も新装し、明るい印象の外観

 製造と接客を担うのは、2代目店主の井上続さん(86)の二女、橋本佳奈さん(50)。現在は「見習い」として父から指導を受け、試行錯誤の日々を送る。

 同店は昭和13年創業。以来80年以上、素朴な味わいのアイスキャンディーは冬場のたい焼きと共に、市民に愛されてきた。

 しかしキャンディーの製造は肉体労働。キャンディーの原液もたい焼きのあんも、創業以来変わらずまきを使ったかまど炊き。汗だくになり、立ち仕事の連続だ。続さんは自身の体調を考え、製造許可の期限を迎える今年9月をめどに営業を終える覚悟でいた。

 そんな中5月、病気で10日ほど入院することに。続さんは入院中、看護師や患者らから、店の存続を願う声を多くもらったという。「みんなが店を続けてくれって言うんだよ」とうれしそうに話す続さんの顔を見た佳奈さんは、安堵(あんど)とともに決意する。「店は私がやろう」

 自営業の苦労や作業の大変さを分かっているからこそ、続さんが佳奈さんに店を継いでほしいと言ったことは今まで一度もないという。佳奈さんの決意を聞いた続さんは「うれしかったし、ありがたかった」とほほ笑む。

店内明るくしゃれた雰囲気に

 改装したのは、店舗入り口と待合室。明るく大きなガラス窓は雪の結晶のデザインを描いて涼しさを演出し、入り口は木の扉を取り付けた。店内は接客カウンターを新調し、木と鉄の素材を組み合わせた飾り棚を設けるなどしゃれた雰囲気に。

 次々に訪れる常連客は、新しくなった外観に驚きつつ「きれいになった」と声を掛ける。また明るい外観を目に留め、若い世代の客が多く訪れるようになったという。

まとめ買いしていく常連客

 現在は見習い修業中の佳奈さん。不安な気持ちもあるが、「昔ながらの味や製法を受け継いで、期待に応えて頑張りたい」と意気込む。かつて作っていた商品もいつか復活させられればと夢を語り、笑顔を見せた。

 アイスキャンディーはミルク、あずき、チョコの3種で1本40円(税込み)。たい焼きは10月初旬から販売予定。不定休。問い合わせは同店(電025・523・2510)へ。

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