食べると脂肪燃焼量が上昇 「太りにくいマフィン」開発 城西大学

城西大学薬学部薬科学科 栄養生理学研究室の矢島克彦助教は、不飽和脂肪酸の比率を高めた脂質を含む「太りにくい」オリジナルマフィンを開発した。一般的なマフィンと比較して、食べることで24時間の脂肪燃焼量が約10%上昇するというもの。

脂質には種類があり、常温で固まりやすい飽和脂肪酸(バター、ラード、パーム油など)と、常温でも固まりにくい不飽和脂肪酸(オリーブ油、菜種油、アマニ油など)で構成される脂質に分類され、マフィンをはじめ一般に流通するお菓子やケーキ生地は飽和脂肪酸を主とした脂質を含む。一方、不飽和度の高い脂肪酸は、血液中から細胞内に取り込まれたのち脂肪燃焼の増加に関与する酵素や輸送体を活性化する効果を示す。そのため、取り入れることで脂肪燃焼量が上昇すると考えられている。

矢島助教は含まれる脂質の不飽和脂肪酸の比率を高めたオリジナルマフィンを開発し、このマフィンを食べることで、24時間の脂肪燃焼量が約10%上昇することをヒューマン・カロリメータ試験※にて確認した。動物は食事で摂取した栄養素を消費(燃焼)しながら生命を維持しており、消費することのできなかった栄養素は体脂肪として蓄積されていく。つまり、このオリジナルマフィンを食することによる脂肪燃焼量の増加は、このマフィンが一般的なマフィンに比べて「約10%太りにくい」ことを意味する。

さらに、この「太りにくいマフィン」を食べた場合被験者の血液や尿中成分の分析により、体脂肪蓄積の予防につながる効果を示唆するパラメータの上昇や、その他の生理指標(睡眠時脳波、ホルモン分泌、自律神経活動など)にも有益な効果が得られつつある状況である(論文発表準備中)。

食の欧米化が進み、クッキーやケーキなど小麦粉に油脂を混ぜて焼成する洋菓子が主流になりつつある日本において、脂質の脂肪酸比率の調整がもたらす効果はあらゆる食品・お菓子に展開可能である。また、近年では糖質制限ダイエットの流行で糖質の摂取を減らす人が急増しているが、糖質の摂取量を減らす代わりに脂質の摂取量の増加が予想される。矢島助教は、本当に「太りにくい」という科学的エビデンスを示すための効果検証、および食品の開発を本研究成果を応用し、マフィンに限らず多様な「太りにくい」食品作りへと発展させていくとともに、どのような脂肪酸比率の脂質を摂取すると健康にいいのか、生理学的なエビデンスの獲得を目指すとしている。

※ヒューマン・カロリメータとは、部屋型のエネルギー代謝測定機器であり、エネルギー消費量や脂肪燃焼量を測定することができる装置である(販売:富士医科産業株式会社)

論文情報:

【PLOS ONE】Meal rich in rapeseed oil increases 24-h fat oxidation more than meal rich in palm oil

参考:

【城西大学】太りにくいマフィンの開発研究に着手!【薬科学科 (4年制)】

© 大学ジャーナルオンライン