約8割を占める水星の巨大なコア、その形成の謎について新説が登場

【▲ NASAの水星探査機メッセンジャー(MESSENGER)によって2008年1月14日に撮影された水星の画像(Credit: NASA/Johns Hopkins University Applied Physics Laboratory/Carnegie Institution of Washington)】

東北大学は7月5日、William F. McDonough 教授や吉崎 昂さんなどからなる研究チームが「全体の7割~8割を占める水星の巨大なコアがどのようにして形成されたのか」について新説を提唱したと発表しました。

水星の直径は4879kmほどありますが、その7割~8割鉄などからなる金属製のコアが占めています。ちなみに、地球のコアは全体の5割ほどを占めているにすぎません。

では、なぜ水星のコアはこのように巨大なのでしょうか?

この点、これまで巨大な天体の衝突によって水星の表面を覆っていた岩石層が剥ぎ取られてしまった結果ではないかと考えられてきました。

ところが、NASAの水星探査機メッセンジャーの観測から、水星の表面は蒸発しやすいカリウム、塩素などの元素を含む岩石でできていることが解りました。もし、巨大な天体の衝突によって水星の表面を覆っていた岩石層が剥ぎ取られてしまったのならば、このような蒸発しやすい元素はその衝突によって蒸発し失われてしまったはずです。

そこで、研究チームが注目したのが、原始太陽系円盤内に存在した原始太陽が生み出した強い磁場です。

原始太陽に近づけば近づくほどこの磁場は強くなるわけですが、磁場が強くなればなるほど選択的に金属が天体に取り込まれやすくなることが解っています。

研究チームによれば、この考え方に基づくモデルによって、巨大な天体の衝突なしに水星の巨大なコアを説明できるだけではなく、地球型惑星のコアから小惑星の密度のバリエーションまで包括的に説明できるといいます。ちなみに天体に含まれている金属の比率が高くなればなるほど、天体の密度も高くなります。

地球では、金属製のコアは溶解することによって地磁気を生み出し、私達生命を有害な宇宙線から守ってくれています。研究チームでは、今回の研究成果は、天体おける生命の生存可能性を考えていくうえでも、重要なヒントを与えるものになるだろうと考えています。

Image Credit: NASA/Johns Hopkins University Applied Physics Laboratory/Carnegie Institution of Washington
Source: 東北大学プレスリリース論文
文/飯銅重幸

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