【東京五輪】夢舞台で輝いた「問題児」 スケボー白井と母校の絆、恩師「よく頑張ったなって」

高校2年、3年と担任だった中村教諭(左)にエールを送られた白井。「問題児だった」とはにかむ=光明相模原高

 新種目のスケートボード・ストリートで大きな一歩を踏み出した白井空良(19)=ムラサキスポーツ。惜しくも決勝進出を逃したが、母校・光明相模原高時代の強い絆に支えられ、ひのき舞台に立つ夢をかなえた。自他ともに認める「問題児」。でも、自然と人の輪ができる人気者だった。

 「マジで迷惑掛けたからなあ。俺のせいでみんなが怒られたこともあったし」。五輪代表を決めた直後の6月、白井は恩師との再会に照れ笑いを浮かべた。傍らで2、3年時の担任だった中村航綺教諭(28)がうなずく。「空良が居るとクラスが明るくなる。居ないと本当に静かだった」

 もっとも、校則を破るような悪さではない。「ボーダーラインを越えないくらいのやんちゃぶり。学校にいる時は世界で活躍しているスケートボーダーという感じではなかった」と中村教諭。だが、その裏には葛藤も抱えていた。

 「けがをしてマイナス思考になっている時もあったので、弱音を聞いてあげていた。常に私の目が届く場所に置いていた」とは1年時の担任だった小川美代子教諭(38)。中村教諭もまた、教え子との思い出話の合間に問い掛ける。「スケボーの話をするの、嫌がったよね」─。

 級友に先を行かれていた。スノーボードで平昌五輪男子ハーフパイプ代表の戸塚優斗(19)=ヨネックス、同じく世界のトッププロが集う「冬季Xゲーム」のビッグエアで2018、19年に連覇した大塚健(20)=バートン。「2人に比べたら俺なんて…」。自信がなかった。

 ただ、同級生に負けぬ輝きを放つのに時間はかからなかった。3年時の19年には海外を転戦する機会が増え、卒業後の21年に世界選手権3位の快挙とともに五輪へと羽ばたいた。

 頂点を争うものにしか分からぬ感情がある。「あいつらはかっこいいなって今でも思う。(大塚)健とは同じけがもしたし、すごく仲がいい」。最高峰の舞台を知った今、視線は再び交差する。

 望んだ結果は得られなかった。それでも、夏空には見慣れた笑みが輝いていた。「緊張している風にも見えたけど、本当に楽しそうだった」。中村教諭は胸を熱くする。「結果うんぬんよりも、楽しんで滑っている姿を見られたことだけで十分。よく頑張ったなって言ってあげたい」

 教え子は常に自然体。どんな顔で再び校門をくぐってくるか。楽しみはまだ続いている。

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