【宇宙クイズ】惑星を逆行して公転している衛星は?

【▲ 左から火星の衛星「フォボス」「ダイモス」、海王星の衛星「トリトン」(Credit: Shutterstock)】

次の衛星のうち、惑星を逆行して公転しているのはどれ?

1.「フォボス(火星)」2.「ダイモス(火星)」 3.「トリトン(海王星)」

■フォボスとダイモス、トリトンの解説

近い将来、人類が火星に降り立って空を見上げた時、東から昇る「ダイモス」と西から昇る「フォボス」、2つの「月」を見ることになるのかもしれません。

火星の衛星フォボスとダイモスは、火星のほぼ赤道上を周回していて、その軌道は円(真円)に近い形をしています。

【▲ 火星の衛星「フォボス(手前)」と「ダイモス(右奥)」を再現したCG(Credit: Shutterstock)】

火星の表面からの距離はフォボスが約6000km、ダイモスが約2万kmで、フォボスは太陽系の衛星の中でも惑星から一番近いところを公転しています。

また、火星は約24時間40分ごとに1回自転していますが、フォボスは約7時間40分で火星を一周しています。そのため、火星から見たフォボスは1日に2回、西から東へ速いスピードで移動することになります。

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西から昇るフォボスは、火星を逆行して公転しているように思いがちですが、これは見かけの逆行運動で、実際には火星の自転と同じ方向に公転しています。

地球の上空約400kmを周回する国際宇宙ステーション(ISS)は、月と同様に地球の自転と同じ方向へ移動していますが、地上ではおおむね西の方角から見え始めて東の方角へと移動していきます(※)。これはISSが地球の自転よりも速く、約90分で地球を一周しているからです。

※…ISSの軌道は地球の赤道に対して約51.6度傾いているため、日本では観測者の真上を通過する場合は「北西から南東へ」または「南西から北東へ」と移動します。

こちらは、地球を北極の上空から見下ろした図です。上段の(1)~(3)は地球から月を見た場合で、月の位置が固定されるように描いています。地上の人間から見た月は、(1)で東の空に見え始め、(2)で真上に見えます。月の移動は時間はかかりますが(3)では月が西の空に沈んで行くように見えます。

いっぽう、下段の(4)~(6)は地球からISSを見た場合で、ISSの動くスピードの方が地球の自転より速いため、地球を固定してISSだけが動くように描かれています。地上の人間から見たISSは、(4)で西の空に見え始めてからは速いスピードで移動し、(5)では真上に到達します。そして(6)で東の空に消えて行くように見えます。

火星から見たフォボスは、この図では(4)~(6)と同じことが起きているため、火星の自転に対して逆行しているように見えるのです。

【▲ 海王星の衛星「トリトン」を再現したCG(Credit: Shutterstock)】

海王星の衛星「トリトン」は、太陽系の衛星の中では7番目に大きく、1989年8月に惑星探査機「ボイジャー2号」が唯一のフライバイ探査を行いました。

木星の「イオ」や「エウロパ」、土星の「エンケラドゥス」や「タイタン」と同じように、トリトンでは地質学的な活動が観測されています。窒素の氷で覆われたトリトンの表面温度は摂氏マイナス235度と低く、氷の火山から摂氏マイナス200度の液体窒素とメタンが噴出していると考えられています。

そしてトリトンの最大の特徴は、海王星の自転に対して逆行していることです。木星、土星、天王星を公転する比較的大きな衛星は、惑星の自転と同じ方向に公転しています。これらの衛星は最初から惑星の周りで形成されたものと考えられています。

ところが、トリトンは海王星の自転方向とは逆向きに公転しているのです。このことから、トリトンは海王星に捉えられた太陽系外縁天体なのではないかと考えられています。

【答え】逆行している衛星は…

正解は、3.「トリトン(海王星)」でした。

【▲ ボイジャー2号が撮影したトリトン(Credit: NASA / JPL / USGS)】

ところで、月は少しずつ地球から遠ざかっているという話を聞いたことはありませんか? これは潮汐力の影響によって角運動量が変化している(自転する地球の角運動量が月に移動して公転速度を加速させている)ためで、同じように火星のダイモスも火星から遠ざかっており、いずれ火星から離れていくといわれています。

いっぽう、火星のフォボスと海王星のトリトンは、逆にそれぞれの惑星に近付いています。フォボスは火星に近すぎるため、トリトンは海王星の自転に逆行しているためで、遠い将来、惑星に落下するか粉々に砕けてしまうと予想されています。

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【▲ フォボスが崩壊して形成された環を持つ火星を描いた想像図(Credit: Tushar Mittal using Celestia 2001-2010, Celestia Development Team)】

Image Credit: NASA / JPL / USGS / Tushar Mittal using Celestia 2001-2010, Celestia Development Team
文/sorae編集部

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