<南風>電子書籍で蘇る

 いま、ジュンク堂書店那覇店で、電子書籍写真集『HATERUMA1965』(C・アウエハント、静子・アウエハント著/Nansei刊)の写真展を開催している。半世紀前の波照間島の神事や風習を記録した写真が電子書籍で蘇(よみがえ)り、その刊行記念の写真展示である。 電子書籍というのは、Amazonや楽天などのインターネット通販を利用してどこからでも入手できるものだが、今のところ意外にも一般書店では買えない。それがこの度、同店店長のご厚意により、電子書籍を閲覧したことがない方々にも、掲載されている内容を少しでもご覧いただけるよう、プリント写真を展示させていただけることになった。

 今、なぜ電子書籍で販売するのか。10年ほど前にモノクロ写真集として出版されたことがあったのだが、もともとはカラーフィルムで撮影されたものが印刷コストの都合で、モノクロの単色でしか発売することができなかった。現在の電子書籍であれば、フルカラーであろうがページ数が増えようが、出版する側のコスト負担や制限はほぼない。

 また、50年も経(た)ったオリジナルフィルムの劣化をくい止めるためにも、フィルムを高解像度スキャンしてデジタル化し、保存する意義がある。そもそもカラーフィルムは光の3原色(RGB)で記録されているものであり、電子書籍を見るためのスマホやPCの画面もRGBで、オリジナルのまま再現される。

 それでも昨年末に『HATERUMA1965』を発刊した際には、「紙に製本したものも欲しい」というお電話をたくさんいただいた。その声にお応えしたいと思い、近々通販サイトから直接印刷製本できるサービスを予定している。

 3月19日(土)午後3時から、ジュンク堂書店那覇店でトークショーを予定。

(桑村ヒロシ、写真家)

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