【新型コロナ】既存薬3薬の同時投与で重症患者の死亡率2%に 日赤医療センターが発表

 日本赤十字医療センター(東京都)の研究グループが、同病院に入院した重症患者に3つの既存薬を同時投与する臨床試験を行い、死亡率2%と良好な結果が得られていたことが分かった。研究グループでは臨床応用に向けさらなる臨床試験を行いたいとしている。

「レムデシビル」「デキサメタゾン」「バリシチニブ」の同時投与で死亡率を大幅に低減

 研究成果を発表したのは、日本赤十字医療センター呼吸器内科の出雲雄大部長らの研究グループ。昨年12月から今年1月にかけ同病院に入院した重症患者44人に対し、同意を得たうえで、すでに治療薬として承認されている「レムデシビル」のほかに抗炎症薬「デキザメタゾン」、免疫調整薬「バリシチニブ」を同時に投与する臨床試験を行った。これまで世界の臨床現場ではバリシチニブとステロイドまたはレムデシビルの併用が試みられ一定の効果を上げていたこと、またデキザメタゾンは重症患者に対する効果が認められていたことから、同時投与を着想したという。

 臨床試験は、44人に対しバリシチニブを14日間、デキサメタゾンとレムデシビルを最大10日間投与するかたちで行われた。経過観察した結果、28日後までに死亡した人はわずか1人(死亡率2.3%)となり、17人が取り付けていた人工呼吸器を外せるまで回復した。入院期間の平均は11日で臨床試験開始前の平均を6日間短縮したという。副作用に関しては34%に肝機能障害などがみられたが、それぞれの薬を単独投与した場合の発生率と差はなかった。

 研究グループではこの同時投与は重症患者に対して有用であり、臨床で広く使われるためには、同時投与を受けていない群と比較するさらなる臨床試験が必要だとしている。論文は日本呼吸器学会の専門誌(電子版)に10日付で掲載されており、以下より全文読むことができる(英語)。

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