渡辺美里「サマータイム ブルース」初作曲のシングルは夏の胸キュンソング  特集:夏の終わりに聴きたいとっておきの1曲

いつも元気をもらえるアップチューン!渡辺美里の夏ソング

夏をテーマにした曲は数あれど、個人的についつい口ずさんでしまうのはやっぱり大好きな渡辺美里の夏ソングたちだ。1986年~2005年まで、西武ライオンズ球場で開催された夏のコンサートが恒例行事だったこともあって、彼女の曲には夏の名曲がたくさんある。

「センチメンタル カンガルー」「夏が来た!」「BIG WAVE やってきた」など、美里の夏歌はいつも元気をもらえるアップチューン。どの曲も夏の光景がぱっと目の前に浮かんできて、ライブでは観客と一体になって盛り上がる最高の曲たちだ。

今回は、そんな渡辺美里の夏ソングの中から、「サマータイム ブルース」を取り上げてみようと思う。

岡村靖幸、小室哲哉… 名だたるクリエイターたちが楽曲を提供

1990年5月12日に発売されたシングル「サマータイム ブルース」は16枚目のシングルだ。そして、この曲は渡辺美里が初めてシングル曲として作曲に挑戦した曲でもある。それまでの渡辺美里作品の作曲を手がけてきたのはそうそうたるミュージシャンたちだ。

ここで少し、渡辺美里初期のシングル作品を振り返りたい。

2枚目「GROWIN’ UP」、6枚目「Long Night(Edited version)」など、数々の名曲を生み出してきたのは鬼才・岡村靖幸。

3枚目「死んでるみたいに生きたくない」、美里の代表曲となった4枚目「My Revolution」、5枚目「Teenage Walk」…などなど、その後も次々に美里の作品を手がけ、美里にとって欠かせない作曲家となった小室哲哉。小室自身も「My Revolution」によって、大きく音楽シーンに躍り出た。

デビュー間もない頃のシングル曲を見ても分かるように、初期の頃は岡村靖幸と小室哲哉が切磋琢磨しながら競い合うようにして曲を提供していた時期でもある。のちに伊秩弘将、佐橋佳幸、木根尚登、大江千里なども加わって、楽曲提供が行われていった。

そんな数々の素晴らしいクリエイターたちの楽曲に触れて育ってきた美里が、作詞・作曲を手がけた「サマータイム ブルース」は、とてもキャッチーでドラマチックな曲だ。

「サマータイム ブルース」のイントロの繰り返しの部分も秀逸で、とても耳なじみのいいフレーズだ。サビの部分も一度聴けば耳を離れない。

 サマータイム ブルース
 サマータイム ブルース
 次の波 やってきたら
 サマータイム ブルース
 もう一度 駆け出すよ
 裸足のままで
 サマータイム ブルース
 二人の気持ちは一つだった

CMソングに起用「サマータイム ブルース」可愛らしい歌詞に思わず笑顔

この曲は、明治生命(現:明治安田生命)のCMソングとしてテレビでもオンエアされた。ショートカットのふわふわの髪型で、テレビカメラを見つめる美里のアップから始まるこのCM。思えば美里のMVも、彼女の顔のアップから始まるものが多かった。「きみに会えて」、「悲しいね」もCM同様にカメラをじっと見つめる美里の顔のアップだ。CMでは「サマータイム ブルース」が流れ、元気いっぱいにリュックを背負って自転車を漕ぐ美里の姿が映っている。この曲で個人的にぐっとくる部分がある。

 眩しい太陽 標的にして
 フリスピー 遠くに
 シュルル 飛んでゆく

この “シュルル” という言葉の響きがなんとも可愛らしくて、聴くたび、口ずさむたび、思わず笑顔になってしまう。

 おろしたてのあの日の スニーカー
 白すぎて恥ずかしかった

“白” という言葉で、ピュアな主人公の少女の気持ちと、眩しさを表す歌詞は素晴らしくて、白すぎるスニーカーがなんだとかとても気恥ずかしいという初々しさに、思わず胸がキュンとしてしまう。

美里の作詞のセンスについては以前『渡辺美里「悲しいね」小室哲哉 “冬曲” の中でダントツ1位の最低気温』でも書いたが、俳句に心傾けていた祖母の言葉の感性が少なからず影響しているのかもしれない。美里の日本語のチョイスはとても美しくて、どこか品があって「素敵だな」と、聴くたびに思う。

作曲の力をつけて新しい扉を開いた「サマータイム ブルース」
「サマータイム ブルース」の歌声は、初期の頃の力強くて、どこかヒリヒリとした歌声とは少し違って聞こえる。この曲までの歌声は力強くて、魂を削るようで常にどこか何かと闘っているような雰囲気があった。そして、そんな美里の歌声と表現力に思わずせつなくなって、涙がこぼれたりもした。

この曲の歌声は、そんな力強さに、母性が加わったような温かさがあって、聴き手を包み込むような包容力と大きな愛を感じずにはいられない。渡辺美里の次へのステップへと繋がった大きな一曲のような気がする。

 サマータイム ブルース
 サマータイム ブルース
 何かを変えてゆけたら
 サマータイム ブルース
 この夏は
 裸足のままで 裸足のままで
 たどりつけるはずね
 サマータイム

「裸足のままで たどりつけるはずね」と語りかける美里自身、次のステップへ進もうとしていた時期であり、作曲という力をつけて、新しい扉を開く第一歩となったのがこの「サマータイム ブルース」なのかもしれない。

カタリベ: 村上あやの

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